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NEWS&COLUMN 交通事故で怪我をさせられた場合、その治療期間に応じた傷害慰謝料(入通院慰謝料)を加害者である相手方に請求できます。相手方が任意保険に加入していれば、症状固定(これ以上治療しても改善が見込めない状態)に至ったと考えられるタイミングで、相手方保険会社から慰謝料等の賠償額の提示をされることが通常です。このとき提示される慰謝料の金額は、適正なものと考えてよいのでしょうか。
任意保険会社の慰謝料の算定基準は、現在、公開されているわけではありませんが、私どもが保険会社と交渉や訴訟を行ってきた経験等からしますと、保険会社の提示額は、訴訟をすれば認められるであろう金額の半分程度にとどまることが珍しくありません。
たとえば、事故により通院を11か月強、入院を約1.5か月した事案で、任意保険会社が、傷害慰謝料として110万円台の金額を提示してきたのに対し、これに応じず訴訟提起したところ、220万円台で解決できた事案がありました。※1
弁護士は、訴訟をすれば認められるであろう金額を支払うよう求めて交渉等を行いますが、その金額を判断するためによく参照するのが、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本弁護士必携) 上巻(基準編)』に掲載されている「入通院慰謝料 別表Ⅰ」です。2023年版の同表を抜粋したものが、下記の表です。※2、※3
慰謝料は、弁護士が代理人として交渉等することで、大幅な増額を得られることが少なくありません。保険会社から賠償額を提示されたとき、すぐに応じるのではなく、一度、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
※1 負傷の程度を考慮し、後述の「入通院慰謝料 別表Ⅰ」に基づく金額よりも増額することを求め、実際に増額が得られた事案です。仮に負傷の程度を考慮しなかったとしても、「入通院慰謝料 別表Ⅰ」に基づけば、通院11か月強、入院約1.5か月であれば、慰謝料は193~195万円程度と考えられますので、いずれにしろ、保険会社の提示額はかなり低額であったと言えます。
※2 『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本弁護士必携) 上巻(基準編)2023年』207頁以下
※3 通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります。また、傷害の部位、程度によっては、同表の金額を20~30%程度増額するものとされ、むち打ち症で他覚所見がない場合や軽い打撲等は、これより低い別の基準を使用するものとされています。
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