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2023年11月6日
コラム
弁護士費用は相手方に請求できる?

 過失割合や、慰謝料などの損害額の算定。様々な争点が生じうる交通事故の損害賠償請求で適正な補償を得るためには、多くの場合、弁護士に依頼する必要があります。この弁護士費用を、全額、相手方に支払わせることはできるのでしょうか。


 交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟追行を弁護士に委任した場合には、弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内に限り、不法行為と相当因果関係に立つ損害として認められます。※1
 交通事故訴訟に通じている裁判官は、「裁判例としては、認容額の10%を基本としつつ、事案の難易、認容額その他諸般の事情を考慮して定められており、一般的にいえば、認容額が高額になれば10%を下回り、少額であれば10%を上回ることが多いといえる。なお、認容額は、過失相殺や損益相殺をした後の認容額を基準としている。」と指摘しています。※2※3
 たとえば、自賠責保険から得られるであろう金額は約175万円であるが、これでは納得がいかないことから弁護士に依頼し、判決で、弁護士費用以外の損害について約350万円が認められた場合、着手金に22万円程度、報酬等で44万円程度、合計66万円程度の弁護士費用が発生する可能性がありますが、判決で認められる弁護士費用は35万円程度までにとどまる可能性があり、実際にかかった弁護士費用の半分程度までしか相手方に支払わせることができない可能性があります。
 このように、判決で相手方に支払わせることが認められるのは、弁護士費用の一部にとどまることが少なくありません。
 また、判決に至る前に和解(示談)により解決することが多いところですが、特に、訴訟提起前の和解(示談)では、弁護士費用を相手方に支払わせないこととすることが多いように思われます。
 残念ながら、弁護士費用全額を相手方に支払わせることができるケースは少ないとお考えいただいた方がよいでしょう。

 弁護士費用の負担が生じないようにする最も良い方法は、弁護士費用特約を利用することです。
 ご自身またはご家族の自動車保険、火災保険、医療保険等に、弁護士費用特約が付帯されている場合、この特約を利用できる可能性があります。弁護士費用特約を利用しても、通常、保険の等級は下がりません。特約が使えるかよく分からないという場合でも、加入されている保険証券をご持参のうえ、ご相談にいらしてください。

 弁護士費用特約とは何かについては、コラム「弁護士費用特約とは」をご参照ください。
 弁護士費用特約を利用する場合、通常、保険の等級には全く影響がないことについては、コラム「自動車保険を使うと等級が下がる? 弁護士費用特約なら下がらない?」をご参照ください。


※1 最高裁昭和44年2月27日判決(民集23・2・441)
※2 大島眞一『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』新日本法規出版、107頁。
※3 大島眞一氏は、前記『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』107頁において、「自賠責保険金の支払を受けることができるのに、それを受けないで訴訟を提起した場合、自賠責保険金の支払を受けた後に訴訟を提起した場合に比べ、認容額は高くなるが、弁護士費用の算定につき、この点を考慮する裁判例が多い」ことも指摘しています。