ニュース&コラム
NEWS&COLUMN死亡事故において、ご遺族が損害賠償請求できる主な項目には、下記のものがあります。
・積極損害(事故のために被害者・遺族が支払わなくてはならなくなった損害)
→ 葬儀関連費用など
・消極損害(事故がなければ得られたであろう利益)
→ 被害者本人の逸失利益(相続人が相続)
精神的損害
→ 被害者本人の慰謝料(相続人が相続)、近親者の固有の慰謝料
多くの場合、このうち高い割合を占めるのは、逸失利益です。
障害をお持ちのお子さんがお亡くなりになった事故の裁判で、この逸失利益を、低額である作業所入所者の平均収入に基づいて算定することが適切か否かが問題になったものがありました。※1
人間一人の「生命の価値」を、どのように、はかるべきか。本人の能力の発展可能性や、障害者の社会参加・就労可能性の拡大を、どう考慮するか。裁判官の考え方が判決に影響しうる論点と言えます。※2
本人を生かして返してほしい。それができないなら、せめてほかの子どもと同じように扱ってほしい。ご遺族の思いに寄り添いながら、少しでも妥当性のある結果が得られるよう、裁判官や相手方を説得できる論理を考え、証拠を揃える。私たち弁護士は、ひとつひとつの事案に向き合っています。
※1 養護学校在学中の男児が授業中に溺死した事件で、横浜地裁平成4年3月5日判決は、県下の作業所入所者の平均収入(年約7万円)を基準に逸失利益を120万円余りと算定しましたが、控訴審の東京高裁平成6年11月29日判決は、これを覆し、1800万円の逸失利益を認めました。
※2 近時の裁判例としては、先天性難聴の11歳の女性が死亡した交通事故に関し、聴覚障害者の大学等への進学率の向上や就労機会等の拡大、テクノロジーの発達によるコミュニケーション手段の充実により聴覚障害が就労に及ぼす影響が小さくなっていくことなどを考慮し、被害者の基礎収入を、聴覚障害者の平均賃金(年約294万円)ではなく、全労働者平均賃金の85%に相当する年約423万円として逸失利益を算定した大阪地裁令和5年2月27日判決があります。