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2023年09月11日
コラム
同乗者は誰に対して損害賠償請求をしたらよい?

 ご家族で、あるいは、ご友人同士で、ドライブ中に交通事故に遭ってしまった。不幸にも運転手以外の同乗者が怪我をされてしまったとき、誰に損害賠償請求をしたらよいでしょうか。
 他車との事故であれば、まずは、相手方車両の運転手、その雇用主、所有者や相手方保険会社に請求することを考えるでしょう。しかし、自損事故の場合や、相手方には過失が認められない場合(加害事故の場合)、双方に過失があるが相手方は無保険で資力がない、あるいは、相手方が逃げてしまい誰か分からない場合には、どうしたらよいでしょう。
 このような場合、怪我をされた方は、法的には、乗っていた車の運転手や所有者に対し、損害賠償請求をすることが可能です。双方の運転手の過失により事故が引き起こされ、いずれの運転手にも100パーセント過失があるわけではない場合でも、民法719条の「共同不法行為」の適用により、どちら側に対しても(乗せてもらった車の運転手に対しても)全額の賠償を請求することができます。※1
 法的には、車を運転してもらった家族や友人に対して損害賠償請求ができるのであれば、その車の運転手や所有者が加入していた自動車保険を使って、被害の補償を受けることはできないのでしょうか。
 被害者と被保険者が友人同士であれば、任意保険を使って補償を受けられる可能性があります。しかし、近しい親族同士の場合、残念ながら、一般的な任意保険の約款では、被害者が被保険者の父母、配偶者、子の場合は免責の対象となっており、補償を受けることができません。※2
 では、自賠責保険による補償は受けられるでしょうか。被害者がその車の所有者である場合は、自賠法の「運行供用者」とされ「他人」には当たらないことから、補償を受けられません。「運転の補助に従事する者」(運転補助者)に当たる場合も補償を受けられませんが、運転行為は全くせず助手席でナビをしていただけの場合、これには当たらないと考えられますので、補償を受けられる可能性があります。※3
 このように、車に同乗していて交通事故の被害に遭われた場合、誰に(どこに)損害賠償請求をしたらよいのかは、ケースバイケースということになります。具体的なご事情を踏まえた検討が必要ですので、交通事故に詳しい弁護士にお早めにご相談されることをお勧めします。

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※1 かつては、好意同乗や無償同乗のケースでは賠償額を減額するという裁判例がありましたが、現在では、事故の危険を増幅させたり危険を承知で同乗したというような場合でなければ減額はされないのが通常です。共同不法行為の加害者は、被害者に対して不真正連帯債務を負うとされており、被害者は、いずれの加害者に対しても全額の請求をできます。なお、双方から支払を受けられる賠償金の合計額は損害額の範囲内となります。また、損害を賠償した加害者は、もう一方の加害者に対し、過失割合に応じた求償をすることができます。
※2 運転手が「人身傷害保険特約」、「搭乗者傷害保険」に加入していたときは、これらの特約による補償を受けることが可能です。これらの特約が付帯されているか分からない場合は、保険証券をご持参のうえ、ご相談にいらしてください。
※3 双方に過失があるケースで、乗っていた車の自賠責保険が使え、相手方の車も自賠責保険には加入していた場合、2つの自賠責保険から支払いを受けられることで、自賠責の限度額が通常の2倍となり(二自賠とか両自賠と言います。)、損害回復を図りやすくなります。