2008/09/12
裁判所だけが新規採用情報公表を遅らせていいものでしょうか
現行61期修習生からの裁判官採用については、下級裁判所裁判官諮問委員会第33回議事録によれば、9月5日に諮問委員会が開かれていて、採用者が決まっていたはずですが、10日まで報道されませんでした。
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/kakyusaibansyo/
pdf/iinkai_33th.pdf
これは、検察庁が、新規採用者に関する情報を5日に発表していることと対照的な対応です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080905-00000082-mai-soci
私は、これだけ法曹養成問題に対する国民の関心が集まっている中、裁判所だけが、国民への情報提供を遅滞するということは社会的にみて許されないことだと思います。
私が修習生の頃から、検察官の採用発表は、修習生が修習生の身分を有している時期に行われていましたが、裁判官については、修習生が修習生ではなくなった時期に行われるのが慣例となっていました。これは、任官拒否者が出現したときに同期の修習生を中心とした非難の声が巻き上がるのを避けようとしたからではないかと言われていた時期があります。しかし、今や毎年のように判事補として採用されない修習生が複数出現する時代となっていますから、発表を遅らせることには採用拒否への社会的非難を避ける意味はもはやありません。別の意図を持って遅らせているのか、早期の報道が大事だという意識が欠如しているのかのいずれかと言わざるを得ません。この点、現行司法試験合格者数から比較すると、裁判官への任官者の比率は、下記のとおり、10%近い数字から4%以下に減っているなど、裁判所は、合格者の増員の割に採用数を増やそうとしない傾向が顕著ですから、この点への非難を避けようとして、発表を遅らせているのではないかと疑う気持ちがどうしてもでてきてしまいます。また、たとえ数日であっても、身分が不安定な時期を意図的に出現させるということは、裁判官の身分保障について、就職の初っぱなに不安感を植えつけることになり、最高裁による裁判官の心理的統制の第一歩となっているようにも思えてなりません。新任判事補の採用発表は、修習生の身分を保持した段階で行われてしかるべきではないかと思います。少なくとも5日の諮問委員会の内容報告が10日に報道発表されるということには、何らの合理的理由もないように思います。
二回試験合格者数 裁判官採用者数 割合
平成17年 1158 124 10.7%
平成18年 1386 115 8.3%
平成19年 1397 52 3.7%
平成20年 609 24 3.9%