2008/10/14
空き家率の高い地域が発生していることをどう考えるか
10月13日の京都新聞の22面によると、東山区は、空き家率が高い地域ということのようです。このことは、統計調査から裏付けられてもいるようです。空き家の中には老朽化が進んでいるところも多いとのことであり、「倒れるときのことを考えると、怖くてたまらない。」との声もあるとのことです。
このような空き家の増加について、建替が難しいことが指摘されていて、京都市もそのことを認めているようです。
http://www.city.kyoto.lg.jp/higasiyama/cmsfiles/contents/0000020/20120/akiya.pdf
東山区は、歴史的な建物も多いし、町並みそのものが観光資源となっていることから、都市環境形成のための政策立案には難しい問題があることは間違いないのですが、私は、このような事態が生じている原因は、この町並みそのものに遠因があるように思います。つまり、隣地境界ぎりぎりに建築された木造家屋がうなぎの寝床のような細長い敷地に建築されているという現状です。私は、火災の際の類焼の危険性の高い木造家屋を隣地ぎりぎりに建築するということは、本来許されるべきではないと思っています。阪神大震災のような地震に伴う火災の発生などの場合には、大きな被害が発生することが予想されるからです。加えて、東山区の場合、路地を通じないと建物にたどり着けないところも多いわけですが、このような建物は、現状の建築基準法では、間口制限などにひっかかって再建築ができない場合がほとんどということになりますし、狭い敷地で隣地から距離をとるとなると、細長くて住居としては使いにくい建物しか建たないということもあって、空き家が増える現象を生じさせているのではないかと思うのです。
逆転の発想ですが、私は、このような状況の打破には、細長い敷地をいくつかまとめて広い敷地とした場合には、建築制限を一部緩和することにして、建替を促進するようにした方がいいのではないかと思います。これは、京都市の新景観政策に反対する運動の中で出会った人の言葉から得た発想です。すなわち、「土地も高くなってきたら、固定資産税も高くなって、土地を売ってでていかないかんようになるけど、私ら、この町が好きなんやから、みんなで住めるように、土地をまとめて共同してマンション建てるようにしたんや。」という言葉です。都市が都市として発展していく中で、高層化が進行していくということは、どんな都市でもみられることです。そんな中で、その都市に住み続けるとすれば、土地を互いに提供してマンションを建築するということは、住民としての一つの知恵です。実際、祇園祭の担い手として、マンション住民は重要な役割を果たすようになってきているなど、京都の都市としての発展は、マンションを抜きにしては考えることができませんし、古くからの住民と新しい住民との交流の中で新たな京都が作られつつあるのです。
なお、この方は、「大文字のときは周りの人をお呼びしたりしてますんや。」ということも言われていました。私自身も、前の事務所の大家さんのビルでの屋上パーティーに招かれたりしていますし、他にも同様のことをやっている人を知っていますから、高い建物を建てた人が周囲を気遣うというのは、京都人の中にはよくみられることだと思います。そんな地道なことから、古い町並みと新しい建物との調和が作り出されていっているのが京都なのです。京都市という自治体が上から規制だけを押しつける手法は余りにも乱暴ですし、その政策が、上記のような空き家の増加という現象を食い止めることにはつながっていないことは、私には皮肉なように感じます。
しつこいようですが、建築規制を強化すれば良好な景観や都市環境が形成されるというのは、偏った考えであると私は思います。建物の新陳代謝も促す政策を住民の総意で作り出す必要があるのです。