遅くなりましたが、本年最初の更新です。今年もよろしくお願い申し上げます。
さて、今回は、土地境界の問題と裁判についての思いつきの提案です。
境界確定訴訟は、土地の境界を裁判所に決めてもらう訴訟です。訴訟ができることについては、普通は調停という話合のための手続を簡易裁判所に申し立てることができますが、境界を定めるための調停は申し立てることができないようになっています。土地の境界は公的なものであって、民間での話合で決めることは許されないという考えが裁判実務の基本的建前となっているため、境界についての話合をするための調停もできないから、簡易裁判所への土地境界に関する紛争の調停の申立もできないということになっているのです。このため、境界について争いがあり、裁判所に関与してもらって解決しようとする場合には、地方裁判所に訴訟を提起する必要があります。この地方裁判所での訴訟でも、上記建前があるため、境界についての和解はできないということになっています。このため、境界確定訴訟で当事者間で境界に関する合意ができたとしても、訴訟外で地積更正をするか、土地所有権の範囲の確認をして、境界の訂正は別途法務局への手続を行うことで処理されています。これは、最近まで地方裁判所でしか離婚訴訟はできず、訴訟でも和解はできないとされていたことと同じような市民感覚とのずれを感じる制度です。
民間では、土地の境界について事実上話合は行われていて、当事者間の合意を尊重して、地積更正とか公図訂正を行うことは通常よく行われていることですから、民間の紛争を解決するべき裁判所では、和解ができないということは、市民感覚からはかなりずれているように思うからです。
そもそも土地の境界が公的なものであったとしても、裁判所で和解するとした場合、その和解の主催者は裁判所という公的機関が行っているわけですから、裁判所が当事者の合意をもって土地境界とすることが合理的であると認めている場合にまで和解を許可しないということは、あまりに建前を尊重しすぎているように思いますし、何よりも利用者たる国民としては、手数がかかりすぎて不便です。国民が望んでいるのは、たらい回しされることなく、一つのところで全部処理されるというワンストップサービスでしょう。
そこで、思いつきの提案ですが、境界確定訴訟でも当事者の合意が土地境界として合理的なものと認めることができる場合には、和解が可能とするよう、法律で定めるべきだと思います。同様に、調停についても、簡易裁判所でも受けつけることができるように法律で明確に定めるべきだと思います。そうすれば、合理的ですし、利用者にとって便利だと思います。ただ、調停の場合、簡易裁判所で行われるため、簡易裁判所裁判官の判断だけで調停合意による境界確定を認めていいのかという問題はありますから、調停の場合に境界合意を認める要件については、慎重な議論は必要かも知れません。
なお、これは、あくまでも提案であり、現行法や実務を前提とする限り、私の事務所でも、土地境界を定める調停を申し立てることはありません。ただ、先日、土地境界をめぐる紛争について裁判をするまでもない案件について、調停を利用するという離れ技を使わせてもらい、何とか解決にこぎ着けることができました。土地境界に関する手続には、弁護士として色々なテクニックを磨くことが必要だと実感しています。