2010/03/29
ロースクール関係者からみた修習生の就職状況とは
法科大学院協会が文科省の助成を受けて運営しているジュリナビというサイトがあります。ロースクール卒業生の就職活動を支援するということで作られたようですから、この動き自体は、歓迎すべきもののように思います。
https://www.jurinavi.com/
しかし、このサイトでは、現状の修習生が置かれている就職難の状態について、「制度に対する不必要な不安感」があるとか、「『即独』問題は、一部弁護士に過剰に取り上げられているのではなかろうか」などと記述されていて、修習生の就職難が事実ではないかのごとき論調に終始しているように思えます。
実際、新62期の就職状況についても分析されており、「新62期生の弁護士未登録者数は、2月末現在68名であり、即独者が18名であり、新62期生は、昨年新61期生と比べても就職率は悪くなっておらず、ほぼ完全就職を達成したといってよい」と断言されています。
https://www.jurinavi.com/recruit_support/tips/data62/data62.php
ただ、私が調査したところでは、新62期の二回試験合格者のうち初期登録しなかった人は132人で、これまでの調査の中で最も多かったことは確かです。ジュリナビの示している上記の数字が何を根拠としているのかは、私のような一般会員にはわかりませんが、上記の数字によれば、この中の半数近くの人が二回試験合格発表後に就職先が決まったということになります。しかしながら、合格者1000人時代までは、二回試験を受ける前にほとんどの修習生が就職先が決まっていたことと比較すれば、100人を超えるような人たちが、合格発表前には就職先が決まっていなかったという状況は、就職難を端的に示しているように思えます。むしろ、そのような事実は正確に指摘しないと、学生の進路選択に誤った情報を流すことになるのではないかと思います。少なくとも、私の周囲には、就職難が事実ではなかったというロースクール卒業生は、ほとんどいないように思います。そのような中、ロースクールの関係者が「完全就職」が達成されたと断言されるのは、卒業生から無用な反発を招くのではないかと心配です。
ちなみに、ここで取り扱われている求人情報は、日弁連のナビよりもまだまだ少ないようですが、ロースクール側でも、求人情報の収集に動いておられることは評価できるように思います。また、就活の具体的な方法、説明会に参加するに際しての心構えなどの説明はかなり具体的でわかりやすくなっている点で評価できますが、現実には、弁護士事務所への就職が困難な状況にある中、技術的な面の指導を強めたとしても、限界もあるように思います。今後は、弁護士事務所だけでなく、企業などへの就職がしやすいように、大学の人脈を広く活かした就職先の確保に努力されることが望まれているように思います。また、修習生だけでなく、司法試験に合格できなかった人の就職先確保にも取り組んでいただければとも思います。