2011/08/31
司法試験を受験されている方へ
今、司法試験を受験されている方というと、予備試験を受けておられる方を除けば、制度上はロースクールの卒業生に限られることになります。ということで、主に、ロースクールの卒業生の方々で、弁護士を志望されている方に向けて、老婆心ながら、以下のことをお勧めしたいと思います。
まず、最初に言っておきますが、弁護士という仕事は、大変やりがいのある仕事です。人の人生に大きく関わる仕事ができますし、仕事の結果いかんによっては社会に大きな影響を与えることができることもあります。ただ、残念ながら、現状では、弁護士になること自体が厳しい状況にあります。修習を終える頃になって、こんなはずではなかったと思う人とか、弁護士にはなってけれども生活が成り立たなくて何のために弁護士になったのだろうというような人がでてこないように、このような文章を書いています。そんなことをせざるを得ないという現状には腹立たしさを覚えつつも、私のように就職難への警鐘を鳴らしていた者が言っておかなければならないだろうと思って書いているということをご理解いただければと思います。では、本題に移ります。
まず、今の司法修習生の就職に関する現状を、司法修習生の友人や若い弁護士に尋ねて、自分の出身大学やロースクールと置き換えた上で、自分が就職戦線で最後まで勝ち残るためには、どれだけの成績で合格する必要があるのかということを確認した方がいいと思います。なぜなら、残念ながら、今の就職事情の厳しさは、実際に経験した人でないとわかりませんし、5年以上前に弁護士になったような人でもわからないほど、司法修習生の就職戦線は急激に厳しくなっていて、ベテラン弁護士ですら今の状況をわかっているとは限らないからです。ましてや、大学の教授などからは正確な情報は得られません。重大な人生選択に関することですから、正確な情報に基づいて、進路を選択することが大事だと思います。
次に、司法試験の合格に自信があるかどうかは別として、一般企業への就職活動もしておかれた方がいいと思います。もはや司法修習を終えたとしても、就職ができるとは限りませんし、むしろ就職に関する状況が毎年厳しくなっている中、その影響を受けて、企業の法務部関係への就職も更に厳しくなる可能性が高くなることも十分予想できるからです。要するに、合格前なら就職できたのに、修習をしたばかりに1年遅れて就職できないということがないとは限らないということです。また、就職活動を通じて、一般企業の給与水準を理解することができますが、その経験が、修習中での就職活動の中でも、弁護士事務所で就職するか、一般企業に法務部員として就職するかということを判断する大きな材料となると思われるからです。新規登録弁護士の給与水準の低下はそれほど急激です。
それから、弁護士事務所への訪問は、合格前から積極的に行われた方がいいでしょう。なぜなら、修習生は、修習先を決めることができませんから、自分が就職したいと思っているところではない修習地に配属されたり、弁護士事務所が多い東京や大阪から離れた地域に配属されたときには、就職活動を行うに際して、かなり厳しいハンデを背負うことになってしまうからです。特に、給費制が廃止されたとしたら、そのハンデは更に厳しいものとなります。それでも、合格前から弁護士との接点を持っていれば、持っていない人よりは情報などの入手の点で若干有利になると思います(あくまでも若干有利ということに過ぎませんが。)。また、合格前の段階での訪問の際の事務所側の反応によって、自分が就職に際して有利な地位にいるのか、それとも厳しい位置にいるのかということもわかりますから、進路選択を早期に決めることができるようにもなると思うからです。ただし、日弁連は、修習開始前の内定については自粛を求めていますから、事務所訪問に応じてくれる事務所がどれだけあるのかはわかりませんので、ご注意願います。
最後になりますが、合格しても修習しないという選択肢もあるので、合格したら修習するという固定的考えに固執する必要はないと思います。昔は、東大法学部を優秀な成績で卒業したような人の中に、国家公務員になるんだけれどもついでに司法試験も合格しておいたという人がいましたが、せいぜい1年に数名という程度だったと思います。しかし、昨年度(2010年冬入所)は、かなりの数が修習しないという選択をしています。給費制が廃止されるということになっていたこともあるかも知れませんが、私は、今の就職事情をよく理解した上での人生選択だったのではないかと推察しています。一般企業での就職も厳しい社会情勢の中、司法試験にも合格していますよということを一般企業や公務員などへの就職の際のアピールポイントにするという選択肢もあるということです。
以上、厳しいことを言っているようですが、悲しいかな、そんなことを言わなければならないぐらい修習生の就職状況は厳しいのが今の現実です。市場の規模に見合わない数を合格させ続けた結果、司法試験の合格ということは、それだけではあまり価値がないということになってしまったわけです。そのような中、他から抜きんでるためには、いい成績で合格することが第一です。しかも、成績だけでなく、他の人よりもアピールできるポイントも磨きながら、積極的な就職活動をできるだけ早い時期から粘り強く行うしかないのです。それが現実です。