2012/07/10
インハウス就職も甘くはないという現実(現行法曹養成制度の構造的欠陥)
修習生の就職環境が年々悪化していることは、このブログで、お伝えしているとおりですが、修習生側にも変化が生まれているようです。
数年前のように、人から誘われるのを待っているだけという人はもはや皆無です。ほとんどの方が積極的に事務所訪問をされていますし、弁護士という職種に限定することなく、企業への就職活動を行う人も増えているように思います。今の段階(実務修習第4クール)で既に30箇所ぐらいは訪問したという人はざらにいます。需給バランスが異常に崩れてしまった結果として、司法試験合格という切符の価値は大きく下がってしまっており、弁護士事務所だけに仕事の場を探すのではなく、一般企業への就職を広く求めないと、仕事の場を確保するのは難しいという状況となってきたわけです。
ただ、前にも指摘しましたが、私が個人的にインハウスの採用先を探す動きをした中でわかってきたことからしますと、一般企業への就職において、司法試験に合格しているということは必ずしも有利には働かないし、むしろ不利に働くところも多いように思います。
まず、他の新規採用者と比較すると、年齢が高いことがネックになるようです。なぜ他と比べて年齢が高いかと言うと、司法修習生は、大学院卒業後試験を受けて合格した後に司法修習を受けるということになるので、通常の大学院卒業者よりも最低でも2年は年齢が高いことになるからです。この点、文系の場合、大学院卒業者は、大卒よりも有利とは言えませんが、その大学院卒業者よりも年齢の面では不利な立場にあることになるわけです。法科大学院を経由した法律専門家の養成制度は、日本の雇用慣行を無視した制度的な欠陥があるということになると思います。
また、採用時期も、修習終了を待つと、12月となり、一斉採用時期からずれて、中途入社扱いになってしまいます。さらに言えば、中途入社の採用の場合、そのまま即働いてほしいという要求が企業側にあるわけですが、その要求に応えるためには、司法修習を中途でやめる必要があるということになってしまうため、すぐに働くことのできる他の中途入社の方との競争でも不利な立場に置かれることになります。
また、資格に応じた高い給料を払う必要があるのではないかという配慮をせねばならないとか、資格を持っているだけにすぐに他に転職されるのではないかとの不安感などが、採用する側にはでてきますから、この点も、不利に働くところがあるようです。
以上指摘したことを考えると、司法修習生の一般企業への就職には決して簡単ではないように思います。この制度を考えた人は、弁護士資格さえとれば誰でも雇ってくれるという幻想を持っていたのではないかと思うほどです。
なお、修習生の企業の就職活動の場合であれば、面接の際にわざと挑発的な質問をするなどして、組織の中でうまく対応できるのかという観点からの反応を探るなどの方法をとることがよくあると思いますが、修習生側がそんなことに慣れていないため、素直に反発してしまうということもあるようです。それがいいことかどうかは別として、修習生側には、更なる意識転換が迫られているように思います。