2010/06/01
修習生の就職支援は国民的課題だと思う
再び、現実の厳しい話。
修習生の就職状況が極めて厳しい状況に置かれていることは、既に何度かブログで紹介していますが、実際に修習生を預かっている弁護士会としては、何とか支援の活動をしたいと動いています。
弁護士会主催で「就職説明会」を開くという試みもその一つですが、いかんせん、世間一般からは就職説明会という評価は受けないであろうという数しか募集先が集まらないという状況です。このため、就職先を探すための心構えとか、面接のテクニックを伝授するような支援のための懇談会を開いたりもしていますし、できるだけ早い時期に弁護士と接触できる機会を増せないかと検討していたりします。
ただ、修習生の中にはあきらめムードもでてきている程、厳しい現実があります。数年前からの就職状況の厳しさが友人などを通じてロースクールの学生に伝わっているためか、修習生は、皆、早期に情報を収集し、一生懸命に就職活動をしていて、何度も事務所訪問をしているけれども、いい結果がでないということを何度も繰り返しているために、将来に展望が持てなくなっているような印象を受けます。
このようにみてくると、やはり今の法曹養成制度には、構造的な欠陥があるように思います。まず、最初に絶対にやるべきことは、合格者数を社会的需要に合わせたものにすることです。次に、ロースクール制度を残すにしても、在学中に受験ができるようにして、ロースクール自身に就職指導の責任を残すようにすることが必要だと思います。なお、社会的需要の予測に際しては、今後は、増やしすぎた若手弁護士の流動化も始まるということで、合格者数を従前の水準に減らしたとしても厳しい就職戦線が残り続ける可能性があるということも考えねばなりません。
これらの対策は、弁護士会ができるものではありません。もはや弁護士会で就職の支援をするぐらいでは、せっかく厳しい試験を乗り越えた若者達の希望を叶えることができない事態となっているのです。しかし、彼らには何らの責任もありません。悪いのは嘘っぱちの夢を与えてしまった社会全体なのですから、彼らの修習終了後の生活について、何らかの対策を考えることが喫緊の課題となっています。修習生は、公務員ですから、失業保険すらもらえない状況に置かれているのであって、労働者としての基本的権利の確保すらできていないということを考えてほしいのです。元々、修習生が相当数就職ができなくなるというようなことは、修習制度自体が前提としていないのです。このことは、ロースクール制度に反対している人にもぜひ考えてほしいと思います。
以上のような次第で、私は、このような構造的欠陥のある制度を作り出したのは、社会全体に責任があるわけですから、この問題の解決も、社会全体で考えてもらうべきだと思います。大量の就職先未定者がでてきたときには、少なくとも、当面の生活支援のための基金の創出して転職のための機会を与えるようにすることなどを考えねばなりません。今後の政治日程を考えると、今から検討したところで、12月末には間に合わないぐらいではないかと思います。ですから、あえて今、提案してみる次第です。どれだけの人がこのブログをみているかはわかりませんし、悲観的に過ぎるとの非難を受けるかも知れませんが、誰かが言い始めないと、12月には大変なことになるように思えてならないのです。