2013/06/11
「司法崩壊の危機」という本を共同執筆しました
最近、ブログの更新ができておりませんでした。その理由の主なところは、仕事が忙しかったということですが、標記の本の共同執筆を依頼されて、その執筆作業にも追われていたからでもあります。仕事に穴を空けることなく、執筆作業をするのは大変でした。準備書面などがぎりぎりになって裁判所や関係者の方々にご迷惑をおかけしたことは心苦しく思っております。
http://kadensha.net/books/2013/201306shihouhoukainokiki.html
このような共同執筆には躊躇するところもありましたが、法曹養成制度検討会議というものが一定の意見をとりまとめるという重大な時期でもありますし、私の個人的な思いとしても、この10年ぐらいは法曹人口問題に注力してきましたので、その集大成としての文書をとりまとめておくことも大事なことかなと思って、がんばってみたような次第です。
私の担当した分野は、法曹人口全般ではなく、司法修習ということで、あまり世間に実態が知られていないところですし、弁護士であっても、司法修習に関わった経験がなかったら、現状がよくわからないと思います。特に、法科大学院を卒業していない人には、今の司法修習のことはよくわからないほど大きく変容しているところがあります。このため、法曹三者にあまり縁のない人にもできるだけわかりやすいようにするとともに、司法修習を実際に受けた人にも、他の期の人との違いなどがわかるようにしてみました。法曹三者の方々にも、自分達が受けてきた修習の持つ意味を見直す機会になるかも知れません。
執筆作業をしながら思ったのですが、法科大学院という制度を考えた人は、実際の法曹養成課程を経験していないか、あるいは、この制度を利用しようとする学生などの志望者が実際にどういう生活をすることになるのかとか、卒業生を受け入れる側がどんなことになるのかなど、制度を実施したときの影響などを全く想像することができないような欠陥的思考の人物だったのではないかと思います。最初の卒業生が司法試験に合格したときぐらいから、弁護士事務所に就職できない人が増えてきて、今や就職できたら奇跡という時代になってしまい、就職もできない資格を苦労して費用もかけても無駄ということで、志望者すら激減してしまったわけですから、根本的に制度そのものが欠陥であることは既に実証されてしまいました。
このような事態を改善するべく設置された法曹養成制度検討会議の中間的とりまとめは、この本の中で詳細に批判的検討をさせていただいたとおり、現場を無視した無責任極まりない提言ですから、国会などで改善案を議論するに際しての検討素材すら提供できていないと思います。それどころか、パブリックコメントすら真摯に公表もしないということで、民主的な手続すら無視して暴走しているように思います。このような事態を放置していたのでは、司法界に優秀な人材を確保することなど期待できなくなるということで、まさに「司法崩壊の危機」にあると思います。
共同執筆者の方々の論稿も、どれも説得力のあるものばかりです。現状の問題点は、この本があれば、おわかりいただけると思います。また、同時期に発刊された和田吉弘先生の「法曹養成制度の問題点と解決策」をご覧いただければ、法曹養成制度検討会議の問題点がよくわかることになるものと思います。
ご笑覧いただければ幸いです。