コラム
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遺言は公正証書にしましょう
公正証書にするか自筆証書にするかのお話です。
他の弁護士が指導した遺言書をめぐる紛争の処理事件を担当したときのことですが、自筆証書遺言について、1文字だけが筆跡が違うということが問題となったことがあります。遺言者には障害があり、かなり苦労されて、遺言書を書かれていたのですが、この1文字が障害となってしまいました。遺言は、厳格な要件が要求されていますから、1文字でも筆跡が違うということは重大な問題となってしまうのです。そのとき、私の依頼者であるこの遺言で遺産を受け取られる側の人が言われたことは、「この遺言を遺された方は、弁護士からは、『トイレットペーパーに書いても遺言は有効だ』と説明されていたから、自分で懸命に書いていた。」ということでした。確かに法理論上は、遺言書に使う紙の指定はありませんから、トイレットペーパーに書いても有効でしょうが、争いの種を遺してしまうことは間違いありません(トイレットペーパーに書いたのでは、本気で書く気はなかったのだと言われて、裁判になってしまう可能性が高いと思います。)。従って、弁護士としては、争いになる余地がほとんどなくなる公正証書の作成を指導するのが一般的です。私もそうしています。ましてや、公正証書遺言は、口で説明すれば(このことを口授と言います。)、公証人が文章にしてくれますから、障害者の方が書くことにご苦労されることもありません。特に弁護士を通じた公正証書遺言の作成は、弁護士が公証人と打ち合わせをして、遺言をされる方は、公証人役場に実印と印鑑証明書をもってゆくだけで終わりますから、拍子抜けするほどに簡単な手続で完了します。この案件は、弁護士が手間を惜しんだがために、後々に問題が生じたということになります。
というわけで、遺言をするのなら、公正証書にすることが第一ということです。
2012年5月 著 弁護士 白 浜 徹 朗