コラム
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遺言することが難しい人
意識がなくなっている人の遺言は無理です。手が動かないなどのことで署名ができなくても意思確認ができれば、公正証書は作成可能ですが(公証人法第39条4項)、会話もできないとなりますと、遺言書を作成することは不可能ということになります。親族の方であれば、目の動きとか、顔の表情などで、何を言いたいのかわかるということがあるかも知れませんが、公証人が理解できませんから、実際に言葉が話せなくなっているような方の遺言はできません。もちろん、これは体力がなくなったり意識が薄れて会話ができないという人の問題であって、手話が可能な方であれば、通訳を交えれば、遺言書の作成は可能ということになります。
ということで、遺言を書く方の状態が実際どうなのかということは、弁護士が実際に面談して確認するということになります。実際に面談したら、これは遺言書を書くなんて無理だと思うことはよくありますし、逆に、親族の方が難しいのではないかなと思っていた人でも、面談したら、遺言書が書けるなと確信できたりすることもあります。
もちろん、遺言を書くことに障害がある人については、後日、争いになることもありますから、それに備えておくということも大事なことになります。私の事務所で遺言書を預かっている人の中には、その備えのことでなるほどそんなことまでするのかと思っている人がいると思います。
また、遺言書が書けるかどうかという以前に、遺言書なんて書いてくれないだろうと親族があきらめている人がいたりもしますが、そんな気むずかしいような人でも、意外とあっさりと書くよと言ってくれたりしたこともありました。そういうところが、弁護士の仕事は難しく、また、おもしろいというところでもあります。
2012年5月 著 弁護士 白 浜 徹 朗