遺言・相続あんしん相談室

コラム

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養子縁組と遺言

誰かに遺産を渡したいというときの方法としては、遺言を書くことに限られるわけではありません。養子縁組をすることでも、養子になった方に遺産を相続させることができます。

養子縁組は、結婚と同じで、遺産を譲りたいという人との間で養子縁組をして、近くの市町村役場に届ければ成立します。簡単な手続で確実な効果が得られることになります。

遺言との大きな違いは、養子縁組は、養子という相続人を創るものだということです。従って、お子さんがおられない方には養子縁組はいい方法ですが、既にお子さんがおられる方の場合には、相続人が増えるだけということになります。相続税の面でも、控除額が増えて、少しお得ですが、税法上は、沢山養子縁組をしても、養子は1人しかいない扱い(但し、全く実子がいない場合には2人までは認められます。)をしますので、注意が必要です。なお、孫を養子にすることで、1代飛ばしての相続も可能ということにもなります。

最大の問題点は、養子縁組は、解消することが難しいということです。遺言は、いつでも、法律の定める方法に従う限り、受け取る側の意向に関係なく、違う内容に書き換えたり、なかったことにしてしまうということができますが、養子縁組の場合には、離婚と同じように、離縁届に相手の署名をもらうか、家庭裁判所に離縁の調停を申し立てて、合意に至るか、裁判をして勝訴しない限り、養子のままということになります。遺言で遺産が渡らないようにしたとしても、遺留分という制度で遺産がもらえるということになってしまいます。

私は、この離縁手続に関与したことがあります。長い間お子さんに恵まれなかった老夫婦が、養子を迎えたところ、同居もしてくれないばかりか、悪態をつかれたりするようになってしまったという案件でした。離縁は、離婚と違って、調停などになっている事件の数は少ないのですが、大概の場合、相続に絡んだ問題になっているように思います。

弁護士としての経験上は、息子さんのお嫁さんなど、人柄もよくわかっているような人を養子にするということなら養子縁組をお薦めしますが、それまであまりつきあいもしておらず、人柄もわからないような人を養子に迎えることは、あまりお薦めできません。遺言書で遺産が渡るように配慮した上で、事実上同居を開始して、うまく親子としての関係が築けそうだという確信が得られた段階で、養子縁組をするという方法がいいのではないかと思います。ただ、そこまで慎重なことをしようとしたら、実際上は、養子には来てくれないという問題もあります。家族になるということは難しいことですね。

2012年6月   著 弁護士 白 浜 徹 朗

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