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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2019/03/17

法曹養成制度の改革は法科大学院救済ありきで進めてはいけないのでは?

法曹養成制度の改革が待ったなしの状況に置かれていることについては、ほとんどの人が異論のないところであろう。最大の問題点は、法曹志願者の減少である。大学の文系科目の花形のような存在であった法学部の志願者が減少し、東大では文Ⅰが文系最難関ではなくなってしまったというのであるから、法曹志願者の最大の基盤である法学部の優秀な学生の層が減少してきているほど事態は深刻である。法曹の最大の供給源である大学法学部の人気が落ちているということだと、法曹志願者の減少を回復させることはしばらくは見込めないだろうから、法曹志願者の回復は急務となっていると言えよう。

この法曹養成の問題では政府案が新たに示され、京都新聞でも、平成31年3月15日に社説が発表され、この政府案への批判的意見が示されている。しかし、この社説にはいくつか指摘せざるを得ない点がある。

まず指摘せねばならないことは、法科大学院の救済という視点を重視している点は果たしてどうなのかということである。今、最も重視せねばならないところは、法曹志願者の減少に歯止めをかけて、その回復を目指すということであって、法科大学院の救済は、法曹志願者の回復のためにも有効であるということが検証された後で検討されるべきことではなかろうか。また、そもそも法科大学院制度そのものがどうだったのかということを検証しないままに、法科大学院の救済を目指すことが果たしていいことなのかということも冷静に考えるべきことのように思う。

法科大学院は、法曹養成の基幹となるべきものとして期待されて設置されたものが、当初より、司法修習の前記修習の代わりすらできず、いつの間にかそのような役割はそもそもできなかったと開き直りのような発言が堂々と法科大学院関係者から行われ(平成24年4月24日開催の法曹の養成に関するフォーラム第13回会議中の井上正仁発言)、結果的に司法修習では前期修習に近い集合修習を復活させねばならなくなり、実務修習期間の短縮を余儀なくされるに至っている。つまり、法科大学院は、当初より、法曹養成の基幹となるだけの教育を学生に施すことができていなかったとの評価を受けてもおかしくなく、それが故に司法修習制度まで変更を余儀なくされているという事実がまずは議論の前提とされるべきもののように思う。

この点、私は、元々、法科大学院に法曹養成の基幹となるような役割を期待することには無理があったと思っている。そもそも「未修」という、法律の知識も不足し、法律家的思考に適しているかどうかもわからないような学生を受け入れることが求められている上、最終的な法曹資格者を選別する司法試験の合格者数と比してはるかに多い数の学生を受け入れて教育するということになっているために、卒業生の中には法曹にならない人の方がむしろ多いような常態での教育を強いられる構造が法科大学院にはあるからである。つまり、その構造上、法科大学院は、法曹そのものの養成ではなく、法曹となろうとする人への学びの場を提供しているに過ぎないのであって、法曹養成の基幹的役割を期待することは制度的に無理があったと思うのである。井上正仁発言は、まさにこのことを正直に告白した発言ととらえると理解しやすいように思う。

しかも、司法試験の受験資格が法科大学院の卒業ということにされたことで、法曹志願者は、法科大学院を卒業して無職状態で社会に一度放り出された上で、司法試験への合格を個人的努力で目指さなければならないことにされてしまった。大学の場合、現役合格が原則であるが、司法試験の場合、浪人以外の選択はないこととされてしまったわけである。このことで、法科大学院は司法試験予備校よりも無責任な立場とされてしまっているように私には思える。これも、法科大学院が法曹養成の基幹となれていない原因の一つではなかろうか(私は、上記の構造的欠陥を修正すると言う意味でのギャップタームの解消、つまり、在学中の司法試験受験を法科大学院生に認めることは好ましい改革なのであって、決して非難されるようなことではないと考えている。)。

次に、法科大学院を救済すれば、法曹志願者が戻るかということであるが、法科大学院を救済しても志願者が戻ることはないことは明らかである。そもそも志願者が減少した原因は、法曹需要の予測の誤りにあって、法科大学院の卒業生が実際に法曹となる前の段階から、就職難を発生させてしまい、その後は弁護士の就職難ということが社会にも広く知れるようになってしまったということにある。資格を得て仕事に就くための試験が司法試験である以上、至極当然のことである。従って、司法試験の合格者を減らして、就職難や就職後の将来への不安を取り除くことがまずは最優先課題とされるべきである。ところが、このように司法試験合格者数を減らすことは、法科大学院にとって、卒業生の司法試験合格確率が減るということに直結するということで、法科大学院関係者からは、合格者数の減少に対して強い不満が述べられることになる。しかし、これは本末転倒の議論であろう。職業人の養成を行う以上、その職業の将来展望を抜きにして、とりあえず沢山合格させてくれなどと社会に要求するのは無責任な議論のように思う。大学医学部の教育者の中では、自分達の学生を合格させたいから医師試験全体の合格者数を増やしてくれなどと言われていることはないと思うが、法学部だけは別の論理がまかり通るということではなかろう。

前述した京都新聞の社説では、予備試験を非難しているように思えるが、法科大学院の教育実態の検証もされないままに、予備試験を制限して法科大学院を優遇することは、本松転倒の議論のように思える。むしろ、予備試験と法科大学院は対等な競争関係におくべきであろう。法科大学院が学生を呼び戻したいのであれば充実した教育を行って学生から支持されるように努力したらいいのではないか。法科大学院関係者は、その卒業生の経済的負担の軽減に直結する司法修習の給費制復活にすら自らの予算確保のために反対し、司法修習生の負担を強く求めたぐらいであるから、学生が集まらないことで自らの経営問題が生じたとしても自助努力に励んで自力解決することは当然のように思う。むしろ、現状では、予備試験があることで、経済的な負担もなく自ら独学で法律の勉強に励もうとする学生にも法曹となれる機会が広がっているのであるから、予備試験は法曹志願者の減少をくい止めているとさえ言うことができるのであって、この制限は、かえって、法曹志願者の減少につながる危険性が極めて高い。実際、雇う側の弁護士や裁判所検察庁でも、予備試験合格組を多く採用している傾向にあり、法科大学院卒業生でなければ採用しないというようなことにはなっていない。裏返せば、雇う側からすれば、予備試験合格者の評価は高いということであり、法科大学院での教育を受けたかどうかが採用にあたっての有利な要素になることができていないということである。これは、決して軽視されるべきではない。結局のところ、予備試験制限には何らの合理的根拠もないと思う。

また、社説では、法科大学院の予備校化を懸念しているようであるが、予備校がなぜ非難されるべきなのかが、私にはわからない。昔から予備校は存在しているし、むしろ、大学の授業では司法試験にはなかなか合格できないということではなかったと思う。反省が行われるべきは、大学や法科大学院の教育の方ではなかろうか。司法試験の合格に実績を上げている予備校が非難されるいわれはないだろうし、むしろ、法科大学院が予備校よりも学生から支持される教育を行うことができているかということが検証されるべきことではないかと私は思う。

最後に、京都新聞の社説には、弁護士の都市部偏在が法科大学院の設置によってもたらされたかのような記述があることも気になった。この記述が、法科大学院の設置によって、弁護士過疎地域が出現したと理解されているのであればそれは誤解である。弁護士ゼロワン地域の解消は、法科大学院の卒業生が司法試験に合格する前に実現している。法科大学院制度の設置に伴い法曹資格者が激増することにはなったのだが、そのことによってゼロワン地域が復活したというようなことはない。弁護士ゼロ地域であった宮津京丹後地域を抱える京都府では、公設事務所の設置などで全国に先駆けてゼロワン地域の解消を実現したのであるが、そのことが地元の新聞社に理解されていなかったとすれば、少し残念である。

なお、この社説が、最近の弁護士の就職の傾向として、地方の弁護士会への入会者が減っているということを問題としているのであれば、果たしてそれが大きな問題なのかということを指摘しておきたい。人口過疎地域での弁護士会の法律相談が相談枠が満杯となっているような事実はなく(むしろ充足率の低さが問題となっているほどである)、地方での弁護士不足の声はほとんど聞こえてこないからである。

いずれにしても、これまでの法曹養成制度の改革は、大学関係者の声が過度に重視されて、理念に先走る傾向があるように思う。実際に法科大学院で教育を受けた人間である若手の弁護士や、弁護士を雇い入れている弁護士を初めとして、裁判所や検察庁などの現場の声にもっと耳を傾けた地道な改革を目指してほしいと思うのである。

2019/02/17

京都マラソンやってました

本日2月17日は、京都マラソンの日です。

事務所そばの河原町丸太町の交差点は、鴨川を下ってきて丸太町通に右折して走ってきたランナーが河原町丸太町交差点を西に向けて通過し、烏丸丸太町まで走ってUターンして、河原町丸太町で右折し、京都市役所前でまたUターンして、河原町丸太町に戻って右折して、京大方向に走るということで、ランナーが3度通過するめずらしい場所になっています。

ちなみに丸太町通は、こんな感じでランナーがすれ違っています。

河原町丸太町は通行人もおられるのですが、これをどう通過させるかという問題があるようです。何となく列車のすれ違いのように思えるような方式が採用されています。

まず、歩行者は、道路の中間にある柵に集められて、ある程度の人数が集まるまで待たされます。その間、ランナーは、柵の間の中央車線を走ります。ある程度の人数の歩行者が集まると、ランナーの走行車線が変更されて、ランナーは、柵の外側を走ることになります。柵と柵の間を走るランナーがなくなったときに、歩行者は、反対側の柵の中に入ることになります。歩行者が柵に入り終えると、ランナーの走行車線が変更されて、今度は、ランナーは柵の内側を走ることになり、歩行者は、反対側に渡り終えることになります。このとき、渡りたい歩行者は、柵の中に入ることになります。これが繰り返されるということで、ランナーと歩行者がぶつかることなく、歩行者が河原町丸太町交差点を南北に渡るということがてきています。横断には、10分ほどはかかることにはなっているようですが、市民の協力があっての京都マラソンということを実感する場所になっています。

 

これが柵の中で待っている歩行者です。ちょうど、ランナーが歩道側の車線を走るように車線変更されたところになります。

 

ランナーの車線変更が終わると、歩行者が互いの柵に向けて移動します。ランナーは歩道側車線を走っています。この移動が終わると、ランナーは、中央車線を走ることになります。

 

2019/01/04

2019年の年頭のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます。

今年は、平成最後の年になります。元号の利用は、中国から伝来したものですが、今や、日本以外には使っているところはないように思います。コンピューターの処理などの関係で、独特な処理が必要となるため、日本のSEの人には忙しい年になるのかも知れません。我々法律家としては、日付の処理などが少しややこしくなり、昨年末に成立させた和解条項では少し工夫が必要だったりしました。時効の問題など期間が問題となる案件でも、昭和と平成にまたがった年数のチェックなどに慎重にならねばならないこともあったりしたので、3つの元号にまたがった場合などはより慎重に扱う必要がでてくるのかも知れません。

私にとって、今年がどんな年になるかと言いますと、昨年末に我が事務所に新たに加藤弁護士が加わったことがありますので、加藤弁護士を早く一人前に育てるということが、私の重要な仕事となりそうです。

初仕事は、弁護士協同組合の理事長としての京都府中小企業団体中央会の新年賀詞交換会への出席でした。西脇京都府知事のご挨拶で、今年は高齢化社会への対処が問題となると言われていたことに納得するところがありました。国会議員の先生方や府議会議長などにも新年早々にご挨拶する機会ももて、今年1年がんばろうという気持ちになりました。

ところで、今年は、亥年です。毎年その年にちなんだ寺社仏閣にお詣りすようにしていますが、猪で有名な護王神社は、恐ろしい程の混雑でしたので、未だにお詣りができず、鳥居付近で写真撮影するぐらいしかできておりません。先ほど、賀詞交換会の帰りに様子を窺いましたが、4日なのに、まだまだ神社に入りきれないほどの行列ができておりました。護王神社では、狛犬ではなく、猪が脇を固めておられます。和気清麻呂をお祀りされていて、足腰の守護神と言われているそうです。

2019/01/01

2019 初春号 vol.15 白浜法律事務所報

平成31年の年頭にあたり

弁護士 白浜徹朗

年末に、加藤真章弁護士が加入することとなりました。加藤弁護士は、早稲田大学卒で、日本郵政の総合職の経験もある優秀な人材です。日本郵政から一念発起して弁護士を目指し、京都大学の法科大学院に入学し、法曹資格を取得したということですから、弁護士としての意欲には期待するところがあります。これにより、当事務所の弁護士スタッフは総勢6名となります。加藤弁護士をよろしくお願い申し上げます。
私、白浜は、2018年の春より、日本弁護士政治連盟の京都支部長に就任することとなり、国会議員など政治家の皆様とお会いする機会が増えています。政治連盟というと政治活動をするのかと思われるかも知れませんが、政治活動と胸を張れるようなことまではしておりません。要するに政治家の先生方と弁護士会との橋渡しのような仕事をしています。弁護士会は、弁護士全員に加入が義務づけられている強制加入団体であるということから、政治的な中立性が求められるところがあり、特定の政党を支持するというようなことができないためです。ただ、世間的には弁護士会は極めて政治的な活動をしているのではないかと誤解されるところがありますが、弁護士会には憲法や人権の擁護という社会的使命があるため、そのための活動が政治的な活動と受け止められることが多いからでしょう。しかし、実際には、政治的な活動とまではいえないような活動しかしていないのが実情です。
ただ、我々弁護士の活動領域が広がっていることもあって、女性の人権を守る活動とか、犯罪被害者の権利擁護のための活動などには、政治家の先生方からも関心を持たれることが多いように感じています。私自身も、この活動を通じて、政治家の先生方とのパイプができて、裁判所だけでは解決できないような案件について、行政の力をお借りするような場面でスムースな手配ができていますので、このような役職に携わることができたことに感謝しています。
私の現在の役職としては、京都弁護士協同組合の理事長というものがあり、これは、弁護士の経済的活動の補助という役割を担っています。弁護士の活動領域が広がっていることもあって、様々な分野の方に特約店としてご加盟いただいています。今年は、創立40周年ということで、大きなイベントも企画されていて、その準備等にも忙しくさせていただいております。この仕事も、裁判以外の業務等につながっていて、皆様のお役に立てることができているように思っています。
今後も、活動の幅は広げようと思っていますが、民法の改正など法律の勉強もせねばならず、暇をみつけては、法律書を読み、パソコンで整理メモを書いたりすることもしています。
最近は、6月の民泊規制強化まで続いた京都の不動産取引の活性化の影響でしょうか、土地の境界に関する事件や賃料の増額に関わる事件なども増え、頭をひねりながら、知恵を絞って、いい解決に至るよう日々努力している毎日です。賃料は安いまま放置すると、その改善にも時間や費用がかかるということを実感しています。
私も、もうそろそろ還暦が近づいて参りましたが、日々精進に努めますので、今後とも、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

 

肖像権にご注意を

弁護士 拝野厚志

1.現代はスマートフォン等で写真を撮影し、SNS等にアップする時代です。しかし、このような行為は、法的にみれば実はリスクのる行為でもあります。今回は写真撮影をするうえで悩ましい問題である肖像権について記したいと思います。
2.例えば、街角スナップを撮影したとして、そこに誰か見ず知らずの人が映り込んでいた場合、その人の肖像権の問題が生じます。
誰しも自分の容ぼうや姿、行動等を勝手に撮影され、これを公表されない権利、すなわち、肖像権を有しているとされます。
そして、知らない人が偶々写り込んだとしても、個人が特定できる写真をその方の承諾もなくSNSにあげた場合には、法的なリスクとして、肖像権の侵害を理由に、民法上、損害賠償請求や削除請求の対象となる可能性があります。
3.スナップ写真をよく撮られているハービー山口氏の若き頃の写真集とかを見ると、通行人が満面の笑顔で撮影に応じていたり、スナップに通行人が写っていたり、近所の高校生が楽しげに会話しているところが写真におさめられていたりと、なんと牧歌的な時代だったのかと驚きます。
このようにおおらかに撮って発表できたのも、インターネットが発達しておらず、写真を見た人限りで情報がとどまっていたため、被写体となった側も情報の拡散ということについてそれほど神経質になる必要がなかったためと思われます。
しかし、現代は、他人に伝わった個人情報が善意悪意に関係なくどこまで拡散するか予測することができない状況にあります。
そのため、自分の意に反して写真を撮られたり発信されることについて誰しも警戒せざるを得ず、写真を撮る側も肖像権に関し慎重に対応する必要があります。
4.せっかく撮った写真が使えないというのも残念なことですが、個人が特定できる写真を不特定多数の目に触れるような形で使用するのであれば、情報をとりまく環境が変化している以上、相手の方の承諾をもらうことが基本と思われます。仕事関係で使う場合には掲載不可による影響も大きいため、書面で承諾をいただくのが安全です。
写真撮影が当然のようになされているお祭りの写真なども、どこまでの撮影を参加者が承諾しているのか、実は難しいところがあります。一般の方からの参加者など、撮影が当然に前提とされている対象以外については、疑問に思うときは、主催者に確認しておくのが安全と思われます。

 

事業承継に関する法務

弁護士 青野理俊

日本企業の多くは中小企業・小規模事業者であり、雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として重要な役割を果たしています。
しかし、今や経営者の年齢のピークが66歳に達していると言われており、いわゆる事業承継が日本社会の喫緊の課題の一つとなっております。
事業承継が進まない原因としては、後継者の不在、多額の税務リスク、株式の分散など個々の企業によって様々ですが、そもそも誰に相談したら良いか分からないということもあろうかと思います。
事業承継の類型として、①親族内承継、②従業員承継、③M&Aの3つに分類されます。このうち、一般的に内外の関係者からの理解が得られやすく長期間の準備が可能である①が多くを占めていましたが、近年、将来性への不安や価値観の多様化などから受け継ぐ人が少なくなっていると言われています。また、相続税対策のみならず他の相続人の遺留分への配慮が必要であることや経営者保証の承継の問題などもあります。相続税や遺留分の対策としては、経営承継円滑化法に基づく事業承継税制や遺留分に関する民法特例を利用することが考えられますし、遺留分に配慮しつつ議決権を保持するために民事信託を利用する道もあります。そのサポート体制として弁護士や公認会計士・税理士の関与が不可欠です。
経営者保証の問題は、①のみならず②の従業員承継にも共通する課題ですが、金融庁が公表している「経営者保証ガイドライン」の活用が考えられます。同ガイドラインでは、一定の要件を満たしている企業につき、廃業時に一定の生活資金等を倒産関連法が定める金額以上に保証人が保持できること、及び、保証に頼らない融資を目指すことに関連して事業承継の際に保証を解除できることなどを定めています。同ガイドラインに基づき金融機関と交渉する際も、弁護士や公認会計士・税理士の関与は不可欠と言えます。
③のM&Aについても、買い手・売り手の双方において法務・財務・事業の各側面から譲渡対象企業を検証し、もっともリスクの少ない手法を策定する必要があります。企業に収益性が認められるかという事業面の検討のみでは危険です。売掛金の回収可能性や長期滞留の在庫の存在など、財務諸表が実態に即しているかどうかに関する財務面の検討や、従業員からの残業代請求や保証債務などの簿外債務の存在可能性のほか取引先との契約内容に資本拘束条項や競業禁止条項が無いかなど法務面の検討も不可
欠です。これらの検討を行うため守秘義務を定めた基本合意書を締結してから企業に関する資料の提供を受けることが通例であり、手続の全般において弁護士の関与が必要になります。
事業承継を進めるためには、これら手法に関する議論もさることながら事業価値自体の磨き上げも重要です。事業承継に向けた準備を早期に始めていただくことが何よりも大事ですので、お気軽にご相談いただけると幸いです。

 

裁判員裁判を経験して

弁護士 大杉光城

1.昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年も様々な事件に悪戦苦闘しましたが、一番印象に残った事件は、とある刑事事件の裁判員裁判です。これまで刑事裁判は多数経験していますが、裁判員裁判は今年が初めての経験でした。そこで、今回は、その裁判員裁判を経験して感じたことについて書いてみたいと思います。
2.刑事裁判とは、「犯罪を犯した」と疑われる人について、裁判所が有罪か無罪か、有罪の場合のどのような処罰とするかを決める手続です。そのうち、裁判員裁判とは、殺人罪や強盗致傷罪などの重大犯罪を対象とし、国民の皆様が「裁判員」として、そのような有罪・無罪などの判断を裁判官と一緒に行うというものです。
3.裁判員裁判の難しさは、やはり、「法律の素人」である国民の皆様に、弁護側の主張をどのようにわかりやすく伝えるか、という点です。
通常の刑事裁判では、判断する裁判所は「法律の専門家」である裁判官ですので、法律の専門用語を使用しても理解してもらえますし、多少舌足らずでも法的な意味を的確に理解してもらうこともできます。しかし、裁判員の方々にはそのような「甘え」は許されません。しかも、裁判員裁判では、連日裁判が行われるため、裁判員の方々は書面を後でゆっくり読む時間もありません。
そのため、わかりやすく説得的な内容であることは当然として、裁判員の方々にそれをどのように伝えるかも重要になります。
4.そこで、弁護側としても、できる限り具体的でかみ砕いた説明を行うほか、説明の際にはパワーポイントを活用したり、要点を一枚の紙にまとめたものを用意したり、さらには、声の大きさ、スピード、立ち振る舞いなどにも気を遣うなど、様々な創意工夫をすることになります。裁判員裁判の準備では、このような「わかりやすく伝える技術」を特に意識する必要があり、改めてその重要性を痛感いたしました。
5.もっとも、これは、裁判員裁判のみに求められるものではありません。皆様との法律相談や打ち合わせでも、わかりやすく伝えること、納得してもらえることの重要性には変わりはないと思います。
今年は、この「わかりやすく伝えること」を意識し、皆様により納得していただけるよう努力を重ねていきたいと思います。

 

弁護士費用保険活用のおすすめ

弁護士 津田一史

日本弁護士連合会は、弁護士費用保険を普及活用することにより、弁護士費用が障害となって弁護士のご利用を断念していたみなさまに権利救済の門戸を開く取り組みをおこなっています。
みなさまは、弁護士費用保険を「特別な保険」だと感じられていませんでしょうか。
実は、みなさまが普通にご契約されている各種保険にも「弁護士費用特約」が付けられている保険が数多くあります。
自動車保険については、交通事故で活用できる保険特約として「弁護士費用特約」が有名です。実は、駅構内で転倒しお怪我をされた場合にも、交通事故として保険を活用できる場合もあります。
法律相談について、弁護士が保険会社の同意を得て同社の費用負担にて実施するほか、1事故につき、被保険者1名ごとに300万円を限度として、同社の同意を得て同社から弁護士費用が支出されますので、結果、みなさまの弁護士費用のご負担が原則ございません。
また、家庭用火災保険では、他人によって住宅や家財に損害を被った場合のみならず、身体を傷つけられた場合にも、法律相談をはじめとした弁護士費用につき、保険会社から支払われる場合があります。さらに、医療保険では、医療ミスがあり身体障害を負った場合はもとより、暴漢に襲われ入院、手術したものの回復しなかったところ、後日、犯人が逮捕された場合などに、被害者として弁護士に法律相談をするに際し、保険を活用できる場合もあるのです。
このように、今日の保険では、弁護士費用を補償する保険の範囲が想像よりも拡大しており、これに気付かれないまま、ご相談に来所されるケースもございます。私自身は、これまで損害保険会社側の弁護士として数多くの案件を務めた経験があり、損害保険に精通している弁護士として、みなさまの保険のご加入内容等について、必ず確認をしているところです。
弁護士にご相談やご依頼される場合には、ぜひとも自らが付けられている保険会社にご連絡いただき、保険の特約等に弁護士費用保険が付けられているか、予めご確認されることをおすすめします。
ご不明な点などございましたら、ご相談ご来所のお申し込みの際に、損害保険に精通している弁護士が在籍する弊所あて、お気軽にお問い合わせください。費用面も含めて適切にご提案し、かつ、みなさまと二人三脚で早期に紛争解決ができるよう、お待ち申し上げております。

 

入所のご挨拶

弁護士 加藤真章

この度、大阪で1年間の司法修習を終えて、弁護士法人白浜法律事務所において弁護士としての第一歩を踏み出すことになりました。
静岡県で生まれ、高校までを静岡県で過ごし、大学進学と共に東京に引っ越し、一度東京で社会人経験を経たのち、京都の大学院へ進みました。その後、司法修習も京都で出来たらよかったのですが、大阪で行うこととなりました…(もちろん、大阪も素晴らしいところですが! )。ですので、京都に住むのは今回で2度目になります。
私の名前である真章という名前はおじいさんが名付けてくれたそうですが、真の文章を書く者、という意味が込められているそうです。私もこの名前に恥じぬよう、常に文章力に磨きをかけていきます。
社会人時代では、もともと郵便局を運営する日本郵政公社、そしてそれが民営化してできた日本郵政グループに属し、主に法務部門において人事・労務管理に関する相談に係るアドバイザリー対応、就業規則及び関係規程改正にかかる適法性審査、各種契約書の確認等の法務業務のほか、預貯金情報開示請求等の弁護士会照会対応を経験しました。特に労働問題に関しては、上記の経験のほか、社会保険労務士の資格も取得していることもあり、自信があります。
私が大学院及び就職地として京都を選択したのは、京都という街が非常に素晴らしい街であり、大変気に入ったからです。大学院に入学する前は、京都へは修学旅行等で数度行っただけでした。
しかし、その際に京都の街並みの荘厳さに大変感動したものです。
そのため、京都という街に住んでみたいという気持ちがあったものの、なかなかそのような機会がなかったところ、大学院進学を機に京都という街に住むことができました。そして、やはり京都という街が非常に素晴らしい街であることを再確認し、就職地としても京都を選択いたしました。
趣味は旅行です。神社仏閣を巡るほか、自然を感じられる風景を見ると心が落ち着きます。特技は暗算です。全国珠算連盟検定1級を取得しており、かなり早いです。
京都という素晴らしい街、そして弁護士法人白浜法律事務所において弁護士ができることに喜びを感じております。もとより未熟ではございますが、依頼者の方から信頼していただける弁護士になれますよう、誠実かつ堅実な仕事を常に心掛け、努力を重ねていく所存です。何卒、皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

相続登記のススメ

事務長 田村彰吾

平成30年度の税制改正により数次相続に掛かる土地の登録免許税の免税措置が設けられました。また、時期を同じくして不動産の相続登記を義務化する法改正が行われようとしています。所有者が分からない土地の解消を目指し、近隣トラブルの責任所在を明確にしたり、土地の有効活用や固定資産税の取りはぐれをなくす目的があると言われています。
相続人にとって、売却の難しい、あるいは思い入れがある等の理由で売ることが出来ない遺産不動産は、登記という公示面においては放置されがちです。高齢化社会となった日本において、相続した相続人もまた高齢者、ということは往々にしてあります。両親の自宅を相続したものの処分に悩んでいるうちに兄弟の一人が亡くなってしまい、権利が複雑になってさらに放置が進んでいく、という悪循環が起こり始めると、次第に相続人から当事者意識が薄れていくことに加え、少子化や離婚・再婚のハードルが低くなったことも相まって、気が付いたときには甥姪どころか「兄弟姉妹の再婚後の配偶者の兄弟姉妹」といった会ったこともないような人が共同相続人となっていることもあります。
こうなってしまうと、相続人の数も10人を超えてきて、もはや当事者だけで解決することは困難で、専門職の力を借りなければ当事者の特定や意向確認すらままならない状態となります。専門職からの連絡でも、昨今の特殊詐欺の影響もあってか、訝しんで連絡を返して貰えないこともしばしばです。
面倒になればなるほど、問題を直視することがイヤになる気持ちもよく分かります。しかし、政府の方針からは「今のうちに整理する方がお得ですよ」「放っておくとやがて相続登記義務違反による罰則を設けるかも知れませんよ」という意図が垣間見られます。今の状態はさしあたり、アメ(免税措置)を先出しして、ムチ(相続登記の義務化)をちらつかせている状態です。
複雑化した相続関係の整理には、難易度に比例して弁護士費用なども高額になる可能性があります。なにやら政府に操られているような感覚になる方もいらっしゃるかと思いますが、今回ばかりは便乗して、手付かずであった遺産の整理・手続をされることも検討されてみてはいかがでしょうか。