2011/05/10
岐路を迎えつつある司法修習
4月から、司法修習委員会の委員長に就任しました。
身近に法曹関係者がおられない方だと、司法修習は、司法研修所でやっていると思われている人が多いのではないかと思いますが、司法研修所での研修は修習期間としては2か月程度のことで、ほとんどは実務修習の中で研修が行われています。この実務修習は、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の4つのクールに分かれています。つまり、裁判だけは刑事と民事に分かれていて、実務修習の半分を占めていますから、司法修習は、裁判中心の研修ということになっているわけです。逆に考えると、これまでの弁護修習の位置づけは、多少軽かったということになります。ところが、ロースクール設置後の司法修習では、司法研修所での修習が2つの班に分かれて交代制となったことに伴って、司法研修所での修習を受けていない班の修習生は、選択型修習というものを受けることになりました。そして、その選択修習の中のホームグランド修習というものが弁護士事務所での修習になりました。このため、弁護修習の比重は若干大きくなっています。
最近の司法修習が抱えている最大の問題は、修習生の就職難です。修習生の就職難は、年々厳しさを増していますので、修習生の最大の関心は、果たして自分が就職できるかどうかになっていると言っても過言ではないと思います。このため、修習委員会としては、事実上、就職のサポートもしなければならない状況になっています。京都弁護士会も、ささやかながらいくつかの就職支援の取組をしています。
ただ、司法修習は、司法試験に合格した人を社会で通用できる法曹に育てるということのために実施されているわけですから、修習委員会の役割の中には、就職支援は本来含まれてはいないはずなのです。弁護士の仕事のノウハウや注意点などを実務の中で伝え、2か月という期間内で最低限の教育を施すというだけでも、本来大変な仕事ですが、それ以上に就職のことで時間をとられることで、我々が義務を果たしていることになるのかというジレンマがあるのです。
ところが、昨年と比較した今年の就職状況をみる限り、今年の年末には昨年よりも厳しい結果が待っていることが懸念されます。おそらくは修習を終えても法曹三者にはならない人がかなりの比率を占めることになる可能性が高くなっています。そういう中、これまでのような裁判中心の司法修習でいいのか、そのあり方が問い直される時代が来るかも知れません。大変な時代だということを日々実感しています。
なお、私は、法曹人口論について、様々な情報発信をしてきましたが、委員長をしている間は、その立場上、司法修習のことに関連したことでは、あまり自由に発言できなくなるだろうと思います。この記事も問題になれば削除するかも知れませんので、ご理解下さい。