2011/09/07
司法試験合格という資格なるもの
前回のブログ記事について、私が、司法試験の合格を企業に入るためのステータスとなったと言っているかのような理解をされた方がいるようです。
誤解を与えたかも知れませんが、あえて言わせていただければ、私は、司法試験の合格は、企業にとっては、法務部員として採用する場合を除けば、あまり価値はないだろうし、むしろ敬遠される可能性が高いのではないかと私は思っています。担当させることが適当な部署が限られてしまいますし、有資格者というプライドにも配慮した人事をするとなると、人事上も扱いにくい人材ということになりかねないからです。
私が言いたかったのは、昔と違って、司法試験に合格=弁護士事務所に就職できるということではなくなってしまったという状況の下で、進路をどのように考えて選択してゆくべきなのかということを、司法試験に合格=弁護士になれる=経済的には安定という時代に形成された考えではなく、今の現状に即して、コペルニクス的に転換しなければならない時期に来ているということです。
この点、昔は、司法試験が異常に難しい試験であることが広く世間に知れ渡っていましたから、司法試験の受験のために大学を2年ぐらい留年したところで転職したとしても、そのことがあまり問題にされることはなく、就職は割と簡単だったと思います。合格できなくても転職は容易だったわけですから、時代が大きく変わったなと思います。まあ、昔は、日本経済が好調だったということも背景にあるのかも知れません。
ただ、いずれにしても、弁護士という職域がなくなることはありませんから、資格があれば弁護士という仕事はできるでしょうが、これも、従来とおりの考え方でやっているのは難しくなってきています。そのような中で、どう進路を考えるかということだと思うのです。
本来、このような進路選択の問題は、学生を送り出す側の法科大学院で考えて学生に示していただくべきことだと思いますが、今の修習生をみていると、法科大学院ではそのような進路指導は全く行われていないのではないかと思えてなりません。それゆえに、我々弁護士の側から警鐘を鳴らすしかないということになっていると思うわけです。
ただ、そんな中で、弁護士になるために修習をするという道を選んだ以上は、絶対に弁護士になるし、また、なれるんだという気概を持った上で、勉強や就職活動にがんばってほしいと思います。