2012/06/12
ロースクール生の東京志向
先日、京大の某教授にお目にかかる機会がありましたが、その際聞いた話によると、京大ロースクールの卒業生などは、東京や大阪の大手事務所(宣伝をしている事務所ではなく在籍者が多い事務所のことです)に関心が集中しているので、京都への関心はあまりなさそうだということでした。
過剰供給が続いて就職難が定着してしまったことで、受験生側の考え方にも影響がでてきているようです。
一見すると安定していて給与水準も高そうに思える大手事務所に関心が集中するのは、至極当然のことだとは思います。企業法務はスマートなイメージもありますし、大都会の大きなビルのきれいなオフィスで仕事をするのは、かっこいいと思うのも、わからないではありません。
しかし、通常の弁護士の仕事のうち、企業法務はほんの一握りのものであって、通常の業務は、遺産分割であったり、離婚紛争であったり、土地や建物の立退問題や家賃地代の値上げ問題など、市民生活に関わる仕事ばかりです。
このような市民生活に関わるもめ事は、社会が続く限りなくなることはありませんから、弁護士の仕事もなくなるようなものではありません。修習生の就職難という問題は、このような仕事に関わる人として、毎年どれだけの人を新しく供給することが必要かということに関するバランスが崩れているだけのことです。バランスが崩れた状態が続けば、司法修習の終了という資格=弁護士になる資格ということではなくなるということになりますが、弁護士という仕事がなくなることはありません。
この点、企業法務は、当該企業の業績に大きく影響を受けますから、安定して仕事があるということではありません。浮き沈みがある仕事なのです。当然ながら、必要とされる人材にも、需給の波が生じるということになります。
他方で、市民生活に関わる仕事は泥臭い仕事のように思えるかも知れませんが、人の人生に関わることもできて、個人的に感謝されることもあるやりがいのある仕事でもありますから、そんな仕事についても、実際に目で見て触れたら、印象が変わるかも知れません。
現在、司法修習期間が短縮され、弁護修習期間は2か月しか確保されていないために、弁護士の仕事の全てを経験することができないままに法律家になる人も増えているという問題もある中、修習開始前に自分の進路を決めてしまう人が増えているということは少し残念な気もします。
そんなわけで、私のところもサマクラを企画してみたのですが、まだ、応募がほとんどありません。条件を厳しくしているため、今の時点で応募がないのは至極当然のことではありますが、上記のとおりの大手指向の傾向も影響しているのだろうと思います。ただ、やる気のある人が応募してくれ始めていますので、そのようなやる気のある人にとっていい研修ができるようにがんばろうと思っています。