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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2014/08/03

新規登録弁護士の中に登録を抹消する人が増えているということ

 司法試験に合格したところで弁護士になれるとは限らないということは、もはや常識のように世間に定着してしまった感があり、早くからその問題を指摘してきた者としては、大変残念に思っています。
 司法試験合格者を社会の需要を無視して急増させた結果は、司法修習生の就職難という社会的な問題を招くことになりましたが、この急増政策が適切な時期に停止されずに漫然と維持されたために、単なる就職難の問題から新人弁護士の就業環境の劣悪化という、より深刻な問題に深化してきています。
 その象徴とも言える統計的数字が、若い期の弁護士数の急減です。つまり、私が調べた限り、60期は新旧合わせて2,094名いた時期がピークですが、平成26年8月2日段階での現在数は2,056名と38名の減、61期は同じく2,122名いた時期がピークですが現在数は2,075名と47名の減、62期は同じく2,109名いた時期がピークですが現在数は2,061名と48名の減、63期は同じく1,925名いた時期がピークですが現在数は1,876名と49名の減、64期は同じく1,907名いた時期がピークですが現在数は1,907名と17名の減となっています。61期から63期にかけて総数が減っている中、減少者の総数が同じような人数となっていることは、問題がより深刻化してきていることを示しているように思います。なお、ピーク数を新旧合わせた数字でしか公表できないのは、日弁連の検索システムが新旧を区別しない取扱となっているためです。このため、現行組と新修習組とに統計的な差があるのかどうかがわかりません。ただ、問題は社会的需要を越えた供給過剰にありますから、おそらく有意な差はないものと予想されます。
 63期は、弁護士になってからおよそ3年半を過ぎたという人が多いはずですから、50名近くが既に弁護士ではなくなってしまったということは驚くべき数字のように思います。この63期は、二回試験後の一斉登録可能時点における法曹にならなかった人が、現行組が44名と22.6%を占め、新63期では214名(11.0%)と初めて200名を越えた期です。就職状況が大学生の就職と比較しても格段に悪いという状況になって2年目ぐらいというところです。63期でこのような現象が生じているわけですから、63期よりも就職環境が悪化した64期以降は、さらに顕著な現象が生じる危険性は極めて高いと言わざるを得ません。
 就業環境が劣悪な中、弁護士会費を毎月5万円近くも払うということでは、生活が成り立たなくなるのは当たり前のことですから、弁護士から転職するという人が増えてくるのは経済的必然だと思います。しかし、これが競争原理の結果だと言われるのは、不合理だと思います。弁護士になってから努力するという機会を得る前に劣悪な環境に置かれて撤退を強いられているというわけですから、もはや競争に参加さえさせてもらえなかった人が多数生じているという問題だからです。
 現に、私の周囲でも劣悪な就業環境が原因となって事務所を退所したり、他の事務所に移ろうとしている人がいるとの話がいくつか聞こえてきています。このようなことが続けば、法曹になろうとする人が激減することになるのは必至です。早急に法曹養成制度の改善が求められています。最大の問題が社会的需要に合わない合格者の無駄な輩出にある以上、最初に行うべきことは、合格者数の削減であることは明らかです。これにより、国家的予算も大きく削減できるわけですから、司法修習の給費制復活など、法曹志望者の激減を防止する各種施策も実施できる環境を整えることもできます。急がないと取り返しがつかない状況に司法全体が陥ることとなり、国民にも多大な迷惑が生じることになりかねません。
 個人の人生ということを考えてみてほしいとも思います。20代という時期を勉強に投じて、研修も受け、弁護士になった人が転職をすることを余儀なくされている、そして、そんな人が少数ではなく沢山いるということなわけです。もちろん、旧司法試験の時代にも、いわゆる司法試験浪人という人がいたことは事実ですが、28歳ぐらいまでには、合否の可能性がわかった上で、試験を続けるかどうかを決めていたはずです。今発生している問題は、司法試験には合格し、研修も受けたのに仕事がないという事態です。どちらが不合理なのか、また、どちらが残酷なことなのかは自明なことだと思います。私は、社会的需要を無視して合格者を乱造しているという政策の失敗が若い人たちの人生を狂わせていることになっていると言っても過言ではないのではないかと思っています。

2014/06/17

予備試験の制限は法科大学院にプラスになるのでしょうか?

 新聞報道によりますと、予備試験の制限を東大や京大などの法科大学院が連名で訴えているということらしいのですが、私は、予備試験を制限することは法科大学院にはプラスに働かないように思います。
 法科大学院が十分な数の学生を確保できていたのは、制度が発足したばかりの頃です。法科大学院の発足前の段階では、司法制度改革が夢のように語られたことから、法学部の学生以外の他の分野からも学生を集めることができていたようです。ところが、法科大学院発足前の段階から既に発生していた司法修習生の就職難が次第に大学の法学部学生にまで知られるようになるにつれて、新たに司法試験を受験しようとする人は減少してゆきました。この就職難は、法科大学院の第1回卒業生が輩出される前の段階で既に発生していましたから皮肉なものです。それでも、法科大学院が学生を確保できていたのは、要するに旧司法試験の受験生が移ってきてくれただけのことです(64期ぐらいまでは、旧試験の受験生でしたという司法修習生がかなりの割合を占めていましたが、67期に占める旧試験受験生の割合は相当に減少しています。)。新しく受験しようとする人の数が毎年減少していく一方で、合格者数が2000名程に増やされたことで受験生から合格者になった方も増えたことも相まって司法試験の受験生の総数はさらに減少し続けています。
 今発生している予備試験の受験生の増加という現象も、受験生の中での移動に過ぎないと思います。法科大学院に通う学費や時間が敬遠されている中、予備試験の道も制限されるとなると、受験生は行き場を失うことになりますから、さらに受験生の供給が減少することになります。予備試験を受験してみて手応えはあったとか法律がおもしろくなったという人が法科大学院でもう少し勉強を続けようという流れが、最初から遮断され、断ち切られることになるからです。
 このような私の考えに対し、「予備試験組が不公平とならぬよう割合を配慮すれば合格者が増え、実績ある法科大学院から崩れることとなり、法曹養成牽引の主要なエンジンが損なわれる」という考え方もあるようですが(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai8/siryou10-3.pdf)、実績ある法科大学院のある法学部は、一般企業や公務員への就職で有利なところばかりですから、予備試験まで制限されれば、わざわざ法科大学院に進むことなく企業や公務員の道に進む学生が増えることは火を見るより明らかなことです。つまり、そのような大学では、予備試験が制限されたとすると、法学部には、法律家を目指す学生が法科大学院が設置される前のようには集まらず、国家公務員を目指すような学生が増えることになり、法律学の習得を目指して勉強する学生が内部的にも減少して、法律学研究の学生育成にも問題が生じることになりかねませんし、自校が設置している法科大学院に内部進学する学生も減って他の大学からの学生が増えることになるでしょう。これは、当該大学の法学部の偏差値の低下をさらに進めて、優秀な人材が他の大学や学部にとられてしまうことになる危険性の方が高いと思います。
 私は、今行うべきことは、予備試験の制限などという姑息な受験生泣かせの施策ではなく、司法試験の合格というものの持つ魅力を再度復活させることだと思います。この復活という点では、司法試験合格者という方々の所属する労働市場の需給関係を市場のニーズに合わせて変えることしかありません。つまり、司法試験合格者数を減らすこと、これが今喫緊にやるべきことだと思います。職業としての魅力が復活すれば、法科大学院を目指す学生も自然と増えてくるはずです。そのような環境の中で、法科大学院は、予備校と自由競争して勝ち残ればいいだけのことです。学生が学費を払ってでもいきたいという教育をされている法科大学院は勝ち残るはずでしょう。

2014/06/05

地方に法科大学院を維持することになぜ固執するのでしょうか

日弁連は、「法科大学院公的支援見直し加算プログラムに関し地方・夜間法科大学院に対する配慮を求める会長声明」なるものを公表しています。
その中で、「地方法科大学院の存在は、地方における法曹志望者の経済的負担を大きく軽減させるだけでなく、司法過疎の解消、地域司法の充実、発展に貢献し、さらには、地方自治、地方分権を支える人材を育成するためにも重要な役割を担っている。」と断定していますが、私には理解できません。
地方を支える人材を育成する必要があることは間違いありませんが、そのために、地方に法科大学院が必要であるということにはなりません。
私も、佐賀県杵島郡という地方の出身ですが、法律の学習は、京都でやりました。佐賀県に法学部がないことには何らの不満もありませんでした。佐賀県に法学部がないから、他の都道府県の法学部のある大学に通うとすれば、当然、当該地域に転居することになるわけであって、交通費の負担としても、年に数回帰省する際の交通費が多少変わるというだけの違いですから、地方に法科大学院があれば経済的負担が大きく軽減されることにはなりません。負担が軽減されるのは、その法科大学院のそばに居住している一握りの学生だけということになりますが、そのようなことが平等原則に合致するのかは甚だ疑問です。
また、法科大学院は、いわゆる司法過疎の解消にはほとんど関わっていません。ゼロワン地域の解消は、法科大学院出身者が弁護士になる前にほぼ完了しつつありましたし、実際に、いわゆるゼロワン地域などの弁護士過疎地域に赴任した方々は、弁護士過疎地出身者の方ばかりということではなく、当該地域とは全く縁もゆかりもない方がかなり多く、過疎地の法科大学院出身者ではない人の方が圧倒的に多いはずです。また、弁護士過疎地域に法科大学院を設置しても、当該地域だけでは雇用できないという問題が生じますし、弁護士だけでなく、裁判官や検察官などの実務家教員の確保も困難となりますから、実務教育の質の確保ができるのかという問題もあります。
弁護士過疎地域には、法科大学院を設置するよりも、エクスターンシップなどで、実際に弁護士事務所での職務体験を積む経験をする機会を増やすことと、そのような地域でのエクスターンシップへの経済的援助を強化することがより効果的だと思います。極端な話をすれば、たとえ法科大学院がなくなったとしても、過疎地域での実務修習を可能にするなどすれば、それで足りるはずです。
以上のことは、以前の私のブログでも指摘させていただいたことです。
http://www.shirahama-lo.jp/blog/2012/07/post-156.html
夜間の法科大学院に対する支援については、法科大学院制度がある限りは必要でしょうが、そもそも法科大学院制度が経済的な負担として大きすぎることが社会人の参入の障壁になっていることが見過ごされているように思います。また、資格をとるために予備校に通いながら勉強することは、何らおかしなことではないと思いますが、そのような努力をされている人の生き方も、日弁連は尊重するべきであって、法科大学院を絶対視して予備校を敵視するようなことは強制加入団体としてとるべき態度ではないと思います。

2014/05/30

法科大学院志願者の減少は司法試験の合格率とは関係がない

 読売新聞の平成26年5月30日の論説では、法科大学院の志願者の減少問題を取り上げて、「最近は、法科大学院で学ぶ時間と費用を節約するための「近道」として、予備試験を利用するケースが目立つ。法科大学院に在籍しながら、予備試験を受ける学生も多い」ということを指摘して、その原因として、「法科大学院が自らに課せられた養成機能をきちんと果たしていないことにある」としながらも、一方で、「学費を払っても、司法試験に合格する確率が低いのなら、学生が敬遠するのは無理もない」として、司法試験の合格率の低いことが法科大学院が敬遠される理由であるかのような論調となっています。
 確かに、司法試験の合格率が低い法科大学院には志願者は集まらないでしょうから、個々の法科大学院の志願者の減少の問題として、司法試験の合格率は問題となり得るのかも知れませんが、上記の論説は、法科大学院全体としての志願総数が減少していることを問題としているわけですから、論理が意図的にすり替えられているのではないでしょうか。
 旧試験の時代は、2%程度の合格率でも、志願者が多かったわけですし、法科大学院制度導入後の司法試験の合格率は旧試験と比較するとはるかに高いわけですから、今の司法試験の合格率が想定よりも低いということが法科大学院の志願者の総体的減少の原因ではないことは明らかです。最大の問題は、司法試験に合格しても就職できないという状態になっていることです。就職できるかどうかもわからないことに多額の学費と時間を費やすことはできないということから、法科大学院が敬遠され、少しでも早く合格したいということから、予備試験に受験生が移動しているということです。
 大事なことは、この移動は、受験生の中での移動であるに過ぎないということです。今のような就職状況からしますと、今後はそもそも法律家を志望すらしない人が増えることになり、受験生の総体が急激に減少してゆくことになりますから、勉強を始めていた人の中での移動が終われば、予備試験も志望者が減少することになるはずです。これは、法科大学院制度が導入された直後に旧試験受験生が法科大学院に移動したものの、旧試験受験生が司法試験に合格してゆく中で次第に法科大学院の志願者が減っていった現象によって、既に実証されているのではないかと思います。
 従って、今やるべきことは、予備試験の制限ではなく、司法試験の合格者数を市場ニーズに適合する形で速やかに減少させて、合格すれば就職はあるという状態に変えることです。
 そうすれば、受験生は安心して勉強に専念できますし、修習生も修習に専念できることになるはずです。そうなると、また、志望者数は戻ってくることになるはずです。
 今導入されている制度が失敗であることは明らかですが、その失敗にさらに失敗を重ねるようなことはしてはならないと思います。予備試験の制限は、ただでさえ減っている法曹志望者をさらに減らしてしまう愚策だと思います。