2015/05/30
司法試験受験生の変化は急激なようです
5月28日には、京都弁護士会の総会で、司法試験合格者数の大幅な削減と給費制復活を含む司法修習生に対する経済的支援の拡充を求める決議を採択していただきました。色々と議論はありましたが、決議ということで一つの区切りがついたことはよかったと思っております。
ただ、法曹内部でこのような議論をしている中、情勢はさらに大きく変化してきているようです。端的に言えば、法曹という業界が受験生という次世代の若者から見放されそうな時代になりつつあるのではないかということです。
法科大学院の潜在的な志願者を示す数値である法科大学院適性試験の出願者数は、平成15年度は、大学入試センターが39,250人、日弁連法務研究財団が20,043人でした。これは重複されている方がいますので、正確な出願者数はわかりませんが、志願者数は一貫して減少し続けて、平成22年には、大学入試センターが8,650人、日弁連法務研究財団が7,820人となりました。平成23年からは、法務研究財団だけの実施となりましたが、志願者数は7,829人となり、その後も減り続けて、平成26年度は4,407人となっています。このことはよく知られていることだと思います。
実際に法科大学院に入学した人の数も減っています。平成16年が5,767人で、平成18年に5,784人というピークを迎えてから後は一貫して減り続け、平成26年には2,272人となり、平成27年には2,201人と微減となっています。微減に留まっているから安心できるのではとの考えもあるかも知れませんが、そうでもなさそうです。実際には入学者定員が減っている中でも競争倍率が低下するということになっているからです。つまり、競争倍率は、平成21年が2.80、平成22年が2.74、平成23年が2.88、平成24年が2.53、平成25年は2.20、平成26年は2.00、平成27年は1.87とついに2倍を切る事態となっているのです。2015年の国公立大学の前後期合わせた入試倍率が平均で4.5倍ほどということのようで、2倍を下回っているところはほとんどないということですから、1.87倍ということは果たして選抜試験なのかという根本的疑問が生じてしまうことになります。しかも、定員総数は同じなのではなく毎年減っている中、入試倍率が下がるということになっていることになりますから、志願者の減少に合わせて学校側が定員を減らしても、志願者の減少に追いついていないということになるわけです。具体的な志願者が激減していることは統計上も明らかということになります。
ところで、司法試験の受験資格は、法科大学院の入学ではなく卒業ですから、入学してから卒業する人はどうなっているかということもみてゆかねばなりません。実のところ、法科大学院の修了認定者数も減少しています。平成20年度がピークで4,994人だったのが、次第に減少し、平成23年度には3,937人(68.7%)と4千人を割り込み、平成24年度には3,426人(68.2%)となっています。文科省は、厳格な成績評価・修了認定の実施により、標準修業年限修了率は低下と説明していますので、入学しても修了できる学生の数は、さらに少ないということになるわけです。そうしますと、2200人の入学者が確保できたとしても、実際に卒業する人の数はさらに少なくなるということになります。仮に65%とすれば、1430人となり、修了者は年間1500人を割り込むこととなります。
このような中、司法試験の合格者数を1500人にしたとしても、予備試験からの受験生や前年の不合格者がさらに受験するということもありますが、競争倍率2倍を確保することは大変困難ということになってしまうように思います。このままでは、司法試験は受験した人はほとんど全員合格する試験ということになってしまうということが懸念される事態となっていると言えるのだろうと思います。
私は、司法試験の合格者数が社会的需要に比較して多すぎて問題が生じているということを訴えて変革を求めてきたわけですが、変革よりも先に若者から見放されることによって、制度そのものが変化せざるを得ない事態になりつつあるのではないかと思えてきました。もはや一刻の猶予もないと言わざるを得ないと思います。