2017/02/23
弁護士としてはあまりいい気持ちにはなれないデータ
最近、親しくさせていただいていた弁護士が亡くなることが続いたので、気が重い作業ではあったが、弁護士の死亡による退会者数の変動について調べてみた。
まず、理解していただきたいことは、この15年ほどの間で、異常な増員が行われているために、弁護士の中に占める高齢者の割合は日本の社会全体と比較すると極端に少なくなっているということである。従って、弁護士の総人口が増えたからと言って、その人口数に比例して死亡退会者が増えることにはならないことになる。実際、1989年の自由と正義に掲載された死亡退会者の総数は186名で、1990年は208名であるから、1990年頃には200名ほどが死亡により退会していたと推測できるところ、10年ほど経た1999年では182名で、2000年は136名しか死亡による退会者はいないし、後述するとおり最近でも200名程度しか死亡による退会は掲載されていないので、弁護士の急増後も、死亡による退会者はあまり増加していないようである(請求して自主的に退会する方が増えているわけでもある。)。ただ、後述する最近の死亡退会者数から考えても、2000年の自由と正義に掲載された退会者数は極端に少ない。自由と正義の2000年8月号には退会者の記述が欠落しており、通常連続した欄に掲載される新規登録者や登録換の掲載もされていないことに加えて、9月号の退会者数が大きく増えていないことを考えると、日弁連の自由と正義の編集担当者が8月の掲載を失念していた疑いが払拭できないので、2000年のデータの信頼性はないとみてもらった方がいいようである。ただ、他の3つの年の死亡退会掲載者の数からしても、弁護士の急増が始まる頃までは、多くても年間約200名ほどが死亡により退会していて、少ない年では150名ほどしか死亡による退会はない時代が続いていたという理解でおかしくないものと思われる。
最近の死亡退会者の変動を整理する上で、その区分の方法を工夫してみた。弁護士の登録番号が1万5千番までは若くても27期の方となり、最短で合格していたとしても今では65歳ということでは社会全体の中での位置づけとしては高齢者の死亡ということで理解できるので1万5千番を一つの区切とし、3万番までは働き盛りの死亡というとらえ方ができるから1万5千番までとは分けることとした上で、3万番までの方と4万番以上の方で分けてみたところ、別表記載のとおり、登録番号が3万番を越える登録して間もない弁護士にも亡くなった方がかなりの数となることがわかった。
弁護士の死亡退会者推移表.pdf
すなわち、登録番号が3万番を越える弁護士の死亡として自由と正義に掲載された方は、2009年と2010年ですら12名に達し、2011年と2012年には6名に減少したが、2013年には12名にもなり、2014年に3名と減じたものの、2015年には10名、2016年には11名に増えている。3万番台の弁護士の死亡退会掲載者が年間で12名となった2013年は、4万番台の弁護士の死亡退会掲載者も4名となっている。この年は、66期の一斉登録の年であり、一斉登録時点での未登録が570名で未登録率も30.7%と、数でも率でも最も悪い数字となった年でもある。ちなみに、この年は自由と正義に掲載された請求退会者の総数が320名と初めて300名を超えた年でもあり、翌年には374名もの請求退会者が自由と正義に掲載されている。2013年は自由と正義に登録番号が3万番を越える弁護士の請求退会者が初めて200名を突破し、217名が掲載された年でもある。この年が厳しい年であったことは、他のデータからも読み取れる。翌2014年には、働き盛りである3万番以下で死亡が掲載された弁護士の数が70名となり、総数も195名となるなど、死亡による退会が全体的にも増える傾向が生じている。死亡退会者の総数はその後も増え続けて、2015年と2016年はいずれも208名と200名を超えている。このうちの3万番を越える番号の人の数は、2015年が13名で、2016年は19名と増加傾向となっている。
私が気になるのは、登録して間もないのに死亡している弁護士がかなり数おられるということである。このように登録して間もなく死亡されている弁護士の数については、弁護士の総数が増えていることや2014年以降は減ってきていることや弁護士登録して間もない方に裁判官や検察官の退官者が一部含まれているなどをとらえて、おかしな数字ではないと考える人もいるかも知れない。しかし、新規登録弁護士のほとんどが若い世代であることからすれば、弁護士になってすぐに死亡する会員がこれだけの数いるということについては、私としては、異常さを感じるのである。
もし登録して間もなくして亡くなる方が増えているとすれば、大変憂慮すべきことである。日弁連は、心身の故障により死亡するに至った会員の実態について早急に調査した方がいいのではなかろうか。弁護士から形成されている強制加入団体である日弁連としては、会員の現状を把握して当然であろうから、この事態を放置することなく、実態調査に取り組まれることを望む。