2018/04/06
司法試験の合格率を緩くしても志願者は戻らないのでは?
先日発表された読売新聞の論説では、法科大学院の入学者が減っている原因を司法試験の合格率の低さが主因のように述べておられるようです。しかし、これは、例えば日本全体としての大学の進学率が低くなったとして、その原因を大学全体としての合格率が低いからだと言っているようなものだと思います。法科大学院の希望者が減っているのは、司法試験が難しいからではなく、司法試験に合格してからの就職や将来の展望に問題があるという職業を得るための資格試験として致命的な問題が現に生じているからです。将来の展望が持てるのであれば、驚異的な合格率でも志望者は集まるというのは、旧司法試験で実証されていることです。
旧司法試験の問題点としては、志望者の割に合格者が少なく時間をかけて受験しても合格するかはわからないということが原因で優秀な人材が敬遠する傾向があるということが指摘されていて、法科大学院制度ができる際には司法試験の合格率は緩やかなものになるということが広く言われていました。しかし、法科大学院の卒業生の合格率が緩やかなものとなるには、法科大学院への入学の段階で厳しい選抜があることが前提となっていないと資格試験としてはおかしなことになります。現状は、法科大学院の選抜機能は低下している上に、今の司法試験は、旧司法試験の時代と比べるとはるかに多数の合格者がでるようなものとなっているにも関わらず、既にその受験の前提である法科大学院に志願者が集まらない状態になってしまっているのですから、司法試験の合格者を増やせば志願者が増えるということにはならないということは明らかだと思います。
司法試験の合格率が問題とされるべきは、法科大学院の間での入学希望者を自分の大学院に集めるための競争の中での指標としてのものだろうと思います。資格試験として一定の水準が必要な司法試験では全体としては相当な合格率があることがむしろ求められているはずです。要するに個々の法科大学院が、他校よりも合格率が向上するよう教育に努力するべきことなのです。有名大学の試験が難しいから易しくしてくれなどと世間にアピールするような高校はないのに、なぜ法科大学院の関係者だけが司法試験を易しくしろということを言われるのか不思議です。
何度も言いますが、法曹養成の仕組みの問題として試験の合格率を問題にすることはおかしいのです。法科大学院の関係者が、自らの学校の志願者が減少していることについて、司法試験の合格率が低いということを問題としていることがあったとしても、それはあなたがもっと努力しなさいよということであって、試験をもっと易しくしてやれなどと第三者がいうのは筋が違うのではないでしょうか。