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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2024/09/11

増える遺言作成

「子どもたちが遺産を巡って争わないように」、「遺産を希望するところに寄付したい」…

自らの思いを遺言に残す方が増えています。
日本公証人連合会のWEBサイトによると、令和5年の遺言公正証書の作成件数は、11万8981件で、前年から約7000件増えました。公正証書にせず自筆で作成した遺言は、法務局の遺言保管制度を利用しない場合、相続発生後に遺言書の検認という手続が必要になるのですが、最高裁判所の司法統計によると、令和5年の全国の遺言書の検認申立は2万2314件で、前年から約1800件増えました。法務省の資料によると、令和5年の全国の法務局で自筆遺言を保管した件数は約1万9000件であり、これも前年から増加しています。これに対し、同時期の高齢者人口は概ね横這いでした。

統計データだけでは全ての件数を拾いきれないのですが、少なくとも、公正証書にしたり、法務局の遺言保管制度を利用したりすることで、きちんとした形で遺言を残そうとされる方が増えているとは言えそうです。

紛失や偽造の心配をしなくて済むよう、公正証書にするなど形式面で問題がないようにすることはもちろん大切なのですが、「相続人同士が争わないように」など、遺言を作成された方の思いが実現される内容の遺言とすることも、これに劣らず重要です。

2024初春号事務所報にも書かせていただいたとおり、不動産をお持ちの方、お子様がいらっしゃらないご夫婦で相続人となる兄弟姉妹(または甥姪)がいらっしゃる方などは、遺言をご作成いただいた方がよい場合が多いのですが、遺言作成に当たり注意すべきポイントは個別のご事情により異なります。そのため、遺言作成のサポートは、個別のご事情を踏まえ、十分な打合せを経てさせていただく必要があります。認知症になるなど判断能力が十分でなくなる前に、お早めに、遺言相続に精通した専門家にご相談ください。

著 弁護士 中川由宇

白浜法律事務所 専門サイト「遺言・相続あんしん相談室」でもご説明しております。ぜひご覧ください。

2024/01/05

2024 初春号 vol.20 白浜法律事務所報

誤審

弁護士 白浜徹朗

 長い間弁護士をしていると、どうしても納得できない裁判というものに関わることがあります。刑事事件では、えん罪というものが話題になったりしますが、民事事件でも明らかにおかしな判決というものはあります。明らかな証拠を積み重ねて丁寧な主張立証活動をしても、間違った判決を覆すことは難しいと実感することが多いのです。このため、やむなく和解をお勧めするようなこともあったりします。特に国選の刑事事件などは、弁護士には証拠収集のための費用もないこともあって、かなりの誤審があるように、経験上感じています。神様が判断するわけではなく、人間が裁くわけなので、誤審を完全に防ぐことは困難です。ただ、誤審を防ぐための改善の努力をしなければ、司法の信頼は失われることになります。
 今、日弁連が取り組んでいることとして、再審法改正問題があります。間違った判決で長期間拘束されたような事例は多々あるものの、再審の扉がなかなか開かないというのが実態となっているので、これを制度的に改善しようとしているわけです。
 また刑事事件では、検察官は、公費で活動している上に、警察という大きな組織体が証拠収集に協力してくれるため、被告人とされた方を助ける弁護士が事実を争うことには困難を伴います。それでも、科学的鑑定などによって、えん罪を防ぐことができるのではないかということで、鑑定費用や弁護技術の支援のための財団ができています。先端的弁護によるえん罪防止プロジェクトです(https://sentan-bengo.jp/)。
私は理事長として関わっていますが、おかげさまで、いくつか成果もでています。弁護士を支援する財団ですが、まだまだ周知できていない感がありますので、ここでもご紹介するような次第です。

火事息子

弁護士 拝野厚志

1.古典落語の人情噺に「火事息子」があります。私はこの噺が大好きです。あら筋は、以下のとおりです。
2.昔、江戸の街の大店に火事の好きな子供がおりました。この子が長じて火消しになりたいと言い出し、父親は大店の跡を次いでほしいため、江戸市中の火消しの親方に手を回し、息子が来ても取り合わないようにしておりました。しかし、息子は諦めきれず、家を飛び出し親子の縁を切って、臥煙(がえん)の仲間入りをします。
臥煙も火消しを生業としておりますが、江戸市中の火消しと異なり、アウトローの集まりで町の人間からはたいそう嫌われておりました。
  数年たったある日、江戸の町に火事が起こり、父親の大店にも火が及ぶ恐れが出てまいりました。父親は番頭に対処を指示します。慣れない番頭が屋根に登り、おっかなびっくり対応しておりましたところ、一人の派手な倶利伽羅紋の臥煙が屋根から屋根を飛び越えて大店の屋根にやってきて、番頭を後ろから支え、必要な対処を終わらせました。
3.父親が助けていただいた方にお礼を言わねばならないと、臥煙の顔を見て驚きます。臥煙は家を飛び出し勘当した息子でした。
父親は、憎まれ口をあれこれと浴びせます。その騒ぎを聞いた母親も家から出てきて、息子を認めます。母親は、変わり果てた息子であっても、ただただ愛おしく、父親に服をやってほしいと頼みます。
  「そんなやつにやるくれぇだったら、捨てたほうがマシなんだ」「捨てた方がって。捨てるくらいだったらやってくださいよ」「解らねえな。小遣いでもつけて捨ててごらんよ。拾ってくやつがいるだから」「どんどん捨てます。箪笥ごと捨てるから」「お小遣いはどれくらい捨てまししょうか。二、三百両捨てましょうか。」「そんなに捨てなくてもいい。ちょくちょく捨てれば、またちょくちょく拾いに来るじゃねえかよ」。父母の愛情たっぷりのやり取りが続いて、落ちとなります。
4.この噺で好きなところは、やはり終盤の再会の場面で、子は子で父母のことを思い、父親・母親もあくまで息子を見捨てず、それぞれのあり方で息子に変わらぬ愛情を注ぐところです。子供が何をしていようと二人にとっては大事な息子であり、父親は意地を張りながら、母親はその気持ちに素直に、二人とも変わらぬ愛情を注いでいます。母親が何の拘りもなく自分の気持ちに素直なのも、現代と変わりません。
  このような江戸の頃から変わらぬ人情に触れると、困っている方の心に小さくとも暖かな灯りを灯したいと思って、弁護士を目指した気持ちを思い出すのです。志ん朝師匠が飽きさせることなく最後まで聴かせてかせてくれますので、お時間のあるときにCD等で是非お聴きください。

事業承継・引継ぎ支援センターでの職務

弁護士 青野理俊

 私は、これまでも事業承継法務について研鑽を積んでまいりましたが、令和5年4月より京都府事業承継・引継ぎ支援センターの統括責任者補佐(サブマネージャー)に就任し、現在、週の半分は同センターにて執務しております。
 事業承継の類型としては①親族内承継、②従業員承継、③M&Aの3つに分類されますが、同センターはこの3つのいずれも取り扱う公的な相談機関です。また、相談のみならず支援可能と判断される場合、①や②については事業承継計画書の策定支援に、③については引き合わせ支援(相対する企業を「反対ニーズ」と呼んでいます)に進み、個社支援を行います。
 当職はこれまで、法律の専門家として主に法務面で関わることが殆どでしたが、同センターの執務では、ヒアリングや各種財務諸表の読込みを通じて相談者の事業内容を財務面・事業面で深く分析することから始まります。事業承継はその文字どおり「事業」を承継することですので、その支援のためには事業内容を理解することが不可欠です。同センターでの執務を通じ、①や②の組織内承継における様々な支援施策のほか、③のいわゆるM&Aにおける支援業務のノウハウを得るのみならず、相談者の事業内容を理解する上で必要不可欠な財務分析・事業分析の経験を多数積むことができています。
 現在、週の半分を同センターで執務させていただいており、弁護士業務に避ける時間が限られているため、ご迷惑をお掛けしている顧問先・関与先様もおられるかと思いますが、同センターでの執務は確実に皆様へのリーガルサービスを質的に向上させるものであると確信しております。
 事業承継に関するご相談を含め、事業に関わることは何でもお気軽にご相談いただけると幸いです。

証拠収集のテクニック

弁護士 大杉光城

 昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 今回は、弁護士の証拠の収集のテクニックについて少し書いてみたいと思います。
 「裁判では証拠が重要」ということは聞いた事があるかと思います。では、どうやって証拠を収集すればよいのでしょうか。スマートフォンのカメラ、ドライブレコーダー、ICレコーダーなどで取得した画像、動画、音声などが重要な証拠になるのは、すぐにイメージできると思います。それらで、例えば、怪我の状態、交通事故の状況、会話の内容などを記録しておけば、裁判でも重要な証拠になります。ポイントは、その記録した日時を併せて記録しておくことでしょうか(基本的には、機器の日時を正確に設定しておけば、電子データのプロパティ等で日時は確認できると思います。)。もっとも、写真撮影等は、場合によっては相手方のプライバシーの侵害等にもなり得ますので、心配であれば弁護士にご相談下さい。
 そのほかにも、例えば、相続案件で被相続人の健康状態が問題となるのであれば、病院のカルテや介護施設の介護記録等が重要になってきます。これらは病院等に開示を求めれば出してもらえることが多いと思います。また、不動産事件では、関係する契約書のほか、法務局で誰でも取得できる不動産登記簿や公図等の情報が基本となりますが、国土地理院のホームページで閲覧できる過去の地図や空中写真等も活用することができます。
 以上は、弁護士でなくても収集可能ですが、弁護士が職務上必要であれば、対立する相手方の住民票の記載や戸籍類を調べることができ、相手方の住所や相続関係も明らかにすることができます。そして、事件処理に必要であれば、「弁護士会照会」という制度も利用できます。この制度によれば、例えば、相手方の携帯電話の番号から相手方の氏名や住所を調べたり、交通事故で警察が保有する事故の記録を調べたり、さらには、相手方の預金口座の内容を調べたり(原則として勝訴判決等を取得している必要があります。)することができます。
 私は、弁護士会の業務で弁護士会照会制度の運用に長年関わってきたこともあり、証拠の収集という点では皆様のお役に立てることが多いだろうと思います。「証拠がない」と悩まれている方は、是非一度、私の方までお気軽にご相談下さい。
以 上

所有者不明土地等の管理

弁護士 津田一史

 昨年春から改正民法が施行され、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない「所有者不明土地・建物」や、所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利・法的利益が侵害され又はそのおそれがある「管理不全状態にある土地・建物」について、個々の土地・建物に特化した財産管理制度が新たに設けられました。具体的には、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになりました。
 所有者不明土地等や、管理不全状態にある土地等は、公共事業や民間取引を阻害するだけでなく、近隣に悪影響を発生させるなどして問題となっています。これまでは、管理に適した財産管理制度がなく、管理が非効率になりがちでした。しかしながら、昨年春から、所有者不明土地等に関しては、管理人の選任後、管理人が裁判所の許可を得て、所有者不明土地の売却等をすることがあり得るようになりました。これによって、公共事業や民間取引が活性化することも期待されています。
 もっとも、所有者による管理が不適当であることによる管理不全状態にある土地等については、本来管理する所有者が明らかなわけですから、管理人による売却等も叶わないと想定されます。ひび割れ・破損が生じている擁壁の補修工事や、ゴミの撤去・害虫の駆除も、選任された管理人にお願いできるようになりましたが、これらに要する費用に関しては、管理人の選任を申し立てる利害関係人が、あらかじめ相応の管理費用を負担する必要があり、制度を利用するに際して悩ましいところです。なお、管理人には、事案に応じて、弁護士等のふさわしい者が、地方裁判所によって、個別に選任されますので、申し立てる際や管理を進めるうちに不足が生じる際等に、選任を申し立てる利害関係人が相応の費用を裁判所に納める必要があります。
 そうとはいえ、今後、不動産登記簿等を参照しても所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない所有者不明土地等の増加が予想され、個々の土地・建物の管理に特化したルールの見直しで設けられた制度は、手続選択として利用を検討することがのぞましいと思えます。トラブルの適切な解決手段を選ぶにあたって、各種の法的手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。

これだけは知っておきたい法律知識

弁護士 中川由宇

 もっと早くこのことを知っていたら。…そんな思いをされることがないよう、法的知識を多くの方に広めていくのも、私たち法律家の役割です。
 一般の方だけでなく、隣接職種(行政書士や金融機関の職員)の方に、講師としてお話をすることがあります。昨年は、保険会社の従業員の方向けに、私を含め弁護士数名でお話をしましたので、その中から、相続・遺言や交通事故に関し、皆様に知っておいていただきたい知識を、いくつかピックアップしてお伝えします。
【相続・遺言】
①認知症になる前に遺言をお作りください。要件不備で無効になったり、偽造を疑われたりすることのないよう、公正証書にするか、法務局の遺言保管制度をご利用ください。
②不動産の分け方を巡り相続人同士が長年争うことがあります。そのような事態を避けるため、不動産のある方は、遺言をご作成された方がよい場合があります。
③お子様のいらっしゃらないご夫婦で、相続人となる兄弟姉妹(または甥姪)がいらっしゃる場合は、残された配偶者が、血縁関係のない義理の兄弟姉妹等と交渉を行わなければならない事態を避けるため、遺言をご作成いただく必要性が高いと言えます。兄弟姉妹・甥姪には遺留分はないため、配偶者に全財産を相続させる遺言を作成すれば、配偶者は兄弟姉妹等との交渉を避けられます。
④遺言で公益法人等に遺産の大部分を寄付(遺贈)したいというとき、不動産は金銭に換えないと寄付を受け付けてもらえないことが多いため、遺言執行者が不動産を売却した上で売却金を寄付する清算型遺贈の遺言を作成することがあります。売却の際に発生する税のことで法定相続人に迷惑がかからないよう調整が必要となるなど、専門的知識が要りますので、この分野に通じている専門家にご相談ください。
【交通事故】
 事故後しばらく経って症状が出ることがあります。十分な補償を受けるためには、事故直後にはさほど痛みを感じなくても、できるだけ早く整形外科を受診し、MRI等の必要な検査を受け、検査で異常が見つからなくても痛みや症状を具体的かつ正確に医師に伝え、必要な治療を継続することが肝要です。
 事故直後から弁護士がご助言することで、十分な補償を得られる可能性が高まります。弁護士費用特約が使える場合、相談料や報酬を気にせず、弁護士へのご相談ご依頼ができますし、この特約を使っても保険の等級は下がりませんので、お早めにご相談ください。
 この他にも、いざというときに役立つ情報を交通事故サイト(https://shirahama-lo.jp/kotsujiko/)のコラムに記載しています。
「白浜 交通事故 コラム」で検索ください。

緊急事態の後始末

事務長 田村彰吾

 コロナ禍による厳戒態勢が和らぎ、ここ京都の観光地にも多くの旅行者が来訪し、徐々に日常へシフトしていく状況になってきたようです。まだまだ未知の感染症で有りながらも折り合いを付けて、警戒をすべき状況、緩和すべき状況を各々で見極めて、それに見合った対応をしていく時期なのかも知れません。
 この市況回復期に、業績を回復する企業、未だ回復には遠い企業、様々だと思います。業種によっても区々で、コロナ禍前から見ればまだ1割~2割は売上が戻らない企業、業界も多いと思います。
一時、9割以上の売上を失ったような厳戒期から見れば、わずかな売上減のようにも感じますが、売上が常時2割も戻らないとなると、ほとんどの企業が利益を失います。況してや、コロナ関連融資を受けた企業は、その返済が始まっているところも多く、資金繰りの悪化が容易に想像できます。実際、京都地方裁判所での破産申立件数は大幅に増えていると聞き及びます。
 弊所で担当する破産申立や管財業務の経験則ではありますが、資金繰りに窮する企業は、得てして従業員に無理を求めてしまいがちであり、従業員側もまた、緊急事態であるとして、無理を受け入れてしまうこともあると思います。無理が続けば、お互いに冷静な判断が下せなくなり、心身のバランスを崩してしまうこともあるでしょう。
頑張りすぎたが故に倒産する費用もない、なんてことも起こりえてしまいます。そのような事態に陥らないために、事業を見直す必要があることも受け入れなければなりません。
 倒産、破産だけが選択肢ではありません。どうにもならない事態に陥る前にこそ、寝食を忘れ育ててきた事業、苦楽を共にした従業員を守るためにこそ、専門家への相談が必要です。経営面で不安に思うところがあるのであれば、早めに弊所弁護士に相談されることをお勧めします。今ある制度の中で、どうすれば事業を維持し、従業員を守れるのか。救いの手を差し伸べてくれる政策は期待できなくとも、生き残る方法を考えることが出来るかもしれません。

2023/07/21

交通事故被害者のための相談室を開設しました。

昨今の交通事故のご相談増加をうけて、特別サイト「交通事故被害者のための相談室」を開設しました。

こちらのサイトから、交通事故に関する無料相談のご予約を受け付けております。
交通事故被害にお悩みの方は、特別サイトをご覧のうえ、一度ご相談ください。

「交通事故被害者のための相談室」
https://shirahama-lo.jp/kotsujiko/

2023/01/06

2023 初春号 vol.19 白浜法律事務所報

定期借家制度ができて四半世紀になろうとしています

弁護士 白浜徹朗

定期借家制度は、世紀末の平成11年(1999年)12月に法改正によって創設され、平成12年3月に施行されました。今年で法律ができてから24年ということになります。この創設にあたっては、弱者である借家人の保護に欠けていて、追い出される借家人が増えるとか、乱開発を誘発して貸しビルや貸し室が供給過剰になって、貸主によっても深刻な事態をもたらすというような強い反対意見もありました。しかしながら、少なくとも社会的な問題となっているようなことはありませんし、利用される比率も、従来の賃貸借契約と比較して圧倒的に定期借家が多数を占めるということにもなっていないようです。家賃の急激な上昇などの問題も発生しておらず、地方都市では空家率も問題になっているのが実情のようです。裁判事例としても、定期借家契約に基づく明渡請求が信義則や公序良俗に違反しているなどとして、裁判所がこの契約に基づく明渡請求を認めなかった事例は、見当たらないようです。
裁判上問題になったものとしては、契約書とは別に定期借家であることを説明する文書が必要とされているのに、その取り交わしを怠っていた場合にどうするかということや、期間満了前に契約終了の通知をすることを忘れていて満了後に通知をした場合にどうなるかということがあります。前者は、最高裁判所が、別文書を取り交わしていないから定期借家としては認められないとしたわけですが、このような形式不備が決定的な問題とされて、定期借家契約という契約書に署名捺印があるのに定期借家としての効力を認めないということにしてしまうのは、「法律家の常識は世間の非常識」の典型のような気がします。借家関係の相談で期間を定めたのにでてもらえないのでしょうかという質問に対して、契約で決めてもなかなかでてもらえないのですということを説明するのには苦労することがありましたが、定期借家の制度は契約を整えればきちんと返してもらえるということで、貸す側としても安心できるという点は、もっと評価されていいでしょうし、むしろ誤解を招かないように法律を改正するべきではないかと個人的には思っています。ただ、まだ法律は改正されていませんので、この判例に従って、契約書とは別に説明をしたことを示す書類を整える必要があるという点を注意しなければなりません。他方で、期間満了の際の通知を忘れていたことに対しては、裁判所は救済的な扱いをしています。つまり、期間満了後に通知した場合であっても、通知の日から6か月を経過すれば契約の終了を賃借人に対抗でき、明渡請求は権利濫用ではないという高等裁判所の判例があるのです。交渉をしていたりして、期間が過ぎてしまうことなどもあるわけですから、この判例の方が社会常識に合致しているように思います。ただ、いずれにしても、契約とおり、通知を忘れないようにするということは大事なことです。
この定期借家をめぐって判例を調べましたが、沢山の判例が出現しているようなことではありませんので、あまりトラブルもなく、制度としては既に社会的に定着したと言ってもよいと思いました。ただ、上記のような問題もありますので、契約にあたっては、我々弁護士に相談していただいた方がいいでしょうし、トラブルとなった場合には、すぐにご相談いただくことが肝要と思います。

他士業の方々との連携

弁護士 拝野厚志

1.他士業の方との連携の必要性
今回は、「○○士」と言われる士業の方々との連携について、お話しします。弁護士は「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行う」ことを職務としており、法律には精通しています。
しかし、事件の解決にあたり、税金、不動産の評価、事実の専門的分析など、法律以外の分野の知識・判断が必要となることがあります。そのような場合、その分野の専門家である「士業」の方の意見を求めたり、士業の方と連携しながら、事件を進めていくことになります。
2.税理士との連携
税理士の方々と連携し事件を進めさせていただくことは、必須と思われます。例えば、遺言作成の依頼を受けたときに、御依頼は遺言の作成ですが、作成に至る過程で財産の全て教えていだたくことになります。
財産の規模によっては、税理士の方にもチームに加わっていだたき、相続税対策を含め、検討させていただくことがあります。また、遺産分割においても、分割方法によって税金が異なることがありますので、遺産分割協議書の内容や表現について、意見も求めます。さらに、民事の事件でも、和解条項の文言により、課税のリスクがありますので、相談させていただいて、課税リスクを回避することになります。
3.不動産鑑定士との連携
不動産が絡む事件の場合、不動産鑑定士に土地の評価の算定をお願いしたり、賃料鑑定をお願いすることになります。例えば、遺産分割において、土地が遺産に含まれている場合、土地を特定の相続人が相続し、その代償として金銭での清算を求めることがよくあります。この場合、土地を相続する側としては、土地の価格を少しでも低くしたいでしょうし、他方、清算を受ける側は少しでも土地の価格を高くしたくなります。
そのため、確度の高い土地の価格評価が不可欠となり、専門家である不動産鑑定士の方の意見や鑑定を求めることになります。また、賃貸をめぐる事件においても、賃料の鑑定を求め、適正な賃料をもとに、増額等の主張していくことになります。相手方から提出され鑑定書や意見書に対しても、意見を伺うこともあります。
4.建築士との連携
建築工事がからむ事件の場合、建築士と連携して事件を進めることになります。例えば、工事に不具合があった場合、その不具合が工事に起因するものなのか、それ以外の要因によるのか、建築士の方とともに現地を確認し、意見を求めます。その結果をふまえ、対応を検討することになります。
5.医師との連携
士業ではありませんが、医師と連携し事件を進める場合があります。例えば、交通事故事件で、後遺症が争点となる場合には、整形外科の医師の意見を求めることになります。また、医療過誤事件においては、事故が生じた思われる機序や過失の有無について、医師の意見を求めることになります。
6.社会保険労務士・社会福祉士との連携
例えば、交通事故で働けなくなられた方について、社会保険制度による保障が使えないか、また、申請の手続を相談することがあります。
7.世の中が複雑・多様化しており、よりよく事件を解決するには、様々な士業の方々と連携して事件を進める必要があります。専門家との連携ができているかにより、解決の内容、スピードが格段に異なる可能性があります。当事務所では、必要と判断した場合には、公的機関からも依頼を受けておられる信頼できる士業の方々と連携させていただきながら、事件を進めます。それが当事務所の強みの一つであると思っています。

事業承継に関する法務

弁護士 青野理俊

約5年前の事務所報において、私は、事業承継について書かせていただきました。日本企業の多くは中小企業・小規模事業者であり、雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として重要な役割を果たしていますが、いわゆる事業承継が日本社会の喫緊の課題の一つと言われるようになって久しいものの、今なお解決されずに残っています。
事業承継が進まない原因としては、後継者の不在、多額の税務リスク、株式の分散など個々の企業によって様々ですが、そもそも誰に相談したら良いか分からず放置しているということがあるのは否めないと思います。
事業承継の類型としては①親族内承継、②従業員承継、③M&Aの3つに分類され、一般的に内外の関係者からの理解が得られやすい①が多くを占めていましたが、近年、将来性への不安や価値観の多様化などから後継者が不在ということも多くなっています。また、一見、代表者が交替して①や②の承継が行われたかに見えても、前代表者が株式の大半を保有して実権を握ったまま実態は何も承継されていないというケースも良く見かけます。相続税対策のみならず他の相続人の遺留分への配慮が必要であることや経営者保証の承継の問題などもありますが、前代表者と後継者の間で経営理念など根本的な部分が受け継がれなければ真の承継とは言えません。
③のM&Aについても、買い手・売り手の双方において法務・財務・事業の各側面から譲渡対象企業を検証し、もっともリスクの少ない手法を策定することまでは良く行われています。しかし、譲渡実行後の、例えば従業員や取引先に対するサポート体制など、いわゆるPMI(M&A成立後の統合プロセス)こそが重要であり、譲渡実行後も対象企業が存続できなければ真の承継とは言えません。
このように、事業承継を進めるためには、一時的・表面的な手法だけではなく、継続的・根本的なサポートが何よりも大事であり、法律に基づく紛争解決のプロである弁護士が力を発揮できる分野ですので、お気軽にご相談いただけると幸いです。

弁護士費用特約を知っていますか

弁護士 大杉光城

昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
近年、私が特に力を入れている分野が交通事故事案ですが、そこでは弁護士費用特約を使って受任することがとても多いです。弁護士費用特約とは、保険の契約者が事故被害に遭い、弁護士に法律相談や交渉等の依頼をした場合、その費用が保険金として支払われる特約でして、自動車保険に付いているものが代表的です。今回は、この弁護士費用特約について、知っておいていただきたいことを書いていきます。なお、私の経験上一般的と思われる内容で書きますので、詳細な内容はご加入されている損害保険会社にご確認下さい。
警察庁の統計によれば、交通事故発生数は、平成15年には年間90万件を超えていましたが、令和2年では年間30万件程度と大幅に減少しています。他方で、日弁連の統計によれば、この間の裁判所での訴訟の数は大きく減少していますが、交通事故訴訟の数は、実に3倍以上と大きく増加しています。なぜだと思いますか。
交通事故で怪我を負った事案では、弁護士に依頼する場合、そうでない場合と比較すると、慰謝料の支払額の増加が見込める事案が大半です。また、過失割合が問題となる事案では、専門家でなければ交渉が困難です。さらに、事故の相手が任意保険に加入していなければ、更に交渉や実際の損害の回収は難しくなります。
そこで、交通事故事案では、弁護士が果たす役割がとても大きいのですが、弁護士費用特約に入っていれば、気軽に弁護士に依頼することができます。すなわち、この弁護士費用特約は、使用しても基本的には保険料は上がりませんし、また、弁護士も自由に選ぶことが出来るのが一般的だと思います。もちろん、相談だけでもその費用が支払われます。これは、普通に弁護士に依頼すれば費用倒れになるような被害額が僅かな事故でも同様に使えます。
そのため、完全な加害者側でない限り、弁護士費用特約が付いているのであれば、これを使わないのはもったいないといえます。このように、弁護士費用特約は交通事故の被害者にとって非常に使いやすいものとなっているため、上記のとおり、交通事故訴訟が増加していると考えられています。
ある損害保険会社の調べでは、弁護士費用特約の加入率は60%を超えているとされています。事故に遭った後、調べてみたら入っていたという方もとても多いです。さらには、家族の方の保険でカバーできる場合もあります。
ご自身や周りの方が不幸にも交通事故に遭わせた場合、少しでもその被害回復のお手伝いをさせていただきたいと思いますので、私の方までお気軽にご相談下さい。

調停制度100周年

弁護士 津田一史

昨年10月、調停制度は発足100周年を迎えました。みなさまが「調停」と耳にされて、最初に思い浮かべられるのは、離婚調停、遺産分割調停といった家庭裁判所における家事調停だと予想します。しかしながら、100年前に、訴訟を好まないという当時の日本人の意識も強いことなどから、借地借家調停法が施行されたのが、調停制度の始まりです。当時は、資本主義の発展とともに借地借家、小作、商事といった紛争が増加し、社会不安も高まったことが背景にあったようです。また、借地借家調停は、施行された翌年(1923年)に関東大震災が発生したことを契機に利用者が殺到し、調停に対する評価が高まるとともに、当時の人々の間に定着したとの分析もされています。
その後、小作調停法、商事調停法などが次々と施行され、戦後になって家庭裁判所が新設され、みなさまに馴染みのある家事調停の制度もできました。このように調停制度は1922年に始まり、100年という年月を経て現在の制度に至っているといえます。
ところで、みなさまからは、訴訟(裁判)における判決と、調停とはどのように異なるのかとの質問を、よく伺います。教科書的には、裁判は白黒をつける手続であるため、時間や費用の問題、公開でやり取りをする心理的抵抗感、勝敗を決することにより悪い感情が残り得る点が指摘されています。他方、調停は、非公開のやり取りであり、七分三分の解決案もあり得ますし、相対的に短期間で解決され、費用も抑えられることが多いです。また、調停の利点として、利用者の話を丁寧に聴く手続であること、手続が簡易であることなども挙げられます。さらに、判決が過去の事実に法律を適用して結論を出すものであるのに対し、調停は、利用者らが未来に実行することを合意により約束するものであり「未来を創る」ものだとの指摘さえもございます。
みなさまにおかれましても、過去の事実を強権的に解決するよりは、「未来を創る」ためにお話し合いで解決することがのぞましい事案で,法律事務所にご相談いただく場面もあろうかと思います。裁判だけではなく、調停を申し立てることも視野に入れてご検討いただき、また、適切な解決手段を選ぶにあたって、手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。

新成人に伝えたいこと

弁護士 中川由宇

成人年齢が20歳から18歳になりました。
高校3年生や高校を卒業して間もない18歳、19歳の若者が、親権者の同意なく自由に契約をしたりカードを作ったりできるようになった反面、未成年であることを理由にした契約の取り消しができなくなりました。
成人になっても、特定商取引法や消費者契約法による保護はなされます。しかし、たとえばクーリング・オフに関して言えば、キャッチセールスなどの場合、契約書面を受け取った日を含む8日間以内に書面・メールで契約を取り消す必要がありますので、直ちに対応をする必要があります。最近は、SNSによる怪しい儲け話の勧誘もあり、外に出ず家にいれば安全というわけでもありません。平成30年の消費者契約法改正により、消費者が社会生活上の経験が乏しいことから就職等の願望の実現に過大な不安を抱いていることについて、事業者が知りながら、その不安をあおり契約が必要と告げた場合などにも、消費者は契約を取り消せることになりました。ただ、消費者が、訴訟で取消を認めさせるためには、事業者の認識を立証しなければならないというハードルがあります。
昨年、京都市立日吉ヶ丘高等学校に出向いて、「消費者の権利、知っていますか」をテーマにした出前授業をさせていただきました。これから社会に出ていく若者に、「騙されないように」という話をするだけでなく、「安心して相談できる場所があることを忘れないで」とのメッセージを伝えてきました。
思わぬ失敗をしたとき、恥ずかしい気持ちになったり自己嫌悪に陥ったりし、誰にも相談できないまま時間が過ぎてしまうことがあります。誰しも上手くいかないことはありますが、早めに専門家に相談することで、損害の回復や、速やかな再出発をしやすくなります。これまで以上に、新成人となる18歳頃の若者に、「ひとりで悩まないで」と伝えていくことが大切ではないかと思います。

電子帳簿保存法の対応

事務長 田村彰吾

前回、インボイス制度の実施は、たくさん労力を掛けても、増加が見込める税金の額が、無駄遣いした税金よりも少ない、という話を書きました。いよいよ今年10月から実施ですので準備に追われている方も少なくないと思います。ただ、もう一つ会計事務を悩ませる大きな制度実施が目前に迫っています。それが電子帳簿保存法、いわゆる電帳法の改正です。
本来は2022年1月から実施される予定だったのですが、あまりにもアナウンスが少なかったためか、完全実施が2年先延ばしになっていましたが、いよいよ2024年1月に本格実施されます。今後は、電子商取引の請求書や領収書などは、プリントアウトした紙の保存ではなく、①データを、②タイムスタンプを付加し改変を出来ないようにした上で、③検索できる形で、保存しなければなりません。
「電子商取引なんて大企業の話でしょ」と言うことは全くなく、むしろ社長が一人で事業を営んでいるような小規模事業者こそ対応を真剣に検討しなければなりません。たとえば、Amazonや楽天市場などインターネット通販で事業用の備品を購入した。あるいは請求書をメールやFAXで送付した。このような場合もすべて先ほど述べた方式でデータを保管する必要があります。しかも受領あるいは交付日から「2ヶ月と概ね7日以内」にデータ化して備えなければなりません。つまり「本業が忙しくて、ついつい年度末に領収書を整理するんだよね」は、もう通用しない局面が出てきました。
また、そもそも、どのように保存するのでしょうか。自社でデータサーバーを持っている、という事業者ならまだしも、そんな設備もない小規模事業者は、どういう方法で、検索可能な状態のデータを、どこに保管すればいいのでしょう。俄に巷に溢れだしたデータサービスを利用するにしても費用が掛かります。小規模事業者は、インボイス制度で消費税そのものの負担や、会計事務の複雑化による事務負担が大きくなったうえに、これらの設備費用も負担しなければならなくなるのです。
本来、税というのは、持っている(稼いだ)人から徴収する、担税能力に応じた徴税が基本です。最近の税制改正は、経済的自由主義の名の下に、担税能力を考慮しない、むしろ担税能力の低い方からの徴税にシフトしているように感じてしまいます。