2011/01/01
2011 初春号 vol.7 白浜法律事務所報
芳春のご挨拶
寒椿が鮮やかな花を咲かせる季節、事務所報第7号をお届けします。
白浜法律事務所は、この春、開設20周年を迎えます。また、長岡京事務所もすでに2年目に入り、2拠点の連携は、より確かなものへと高まりつつあります。
もっと身近な存在でありたい。そんな願いとともに今後も取り組んで参りますので、どうぞご期待下さい。
筆界特定の仕事もしています
弁護士 白浜徹朗
私は、筆界特定委員という仕事に就いて法務局の仕事のお手伝いをしています。この仕事は、法務局で行っている筆界特定手続に関して専門家としての意見を述べる仕事です。土地の境界をめぐる紛争の解決には、境界確定訴訟という訴訟手続と、筆界特定手続という行政手続があるわけですが、私が関わっているのは、後者の行政手続ということになります。
土地境界は、私的なものではなく、公的なもので、隣接する当事者の合意だけで決めることはできません。通常、境界を明示する場合には、筆界確認書というものを当事者間で取り交わすことが多いのですが、これは、土地所有者間における合意があるということを示すものであって、これで取り決められたからと言って、土地の境界を移すことは理論上はできません。最終的には、地図訂正ということで、法務局で承認してもらう必要があります。この当事者間の合意ができない場合には、上記の訴訟手続か筆界特定手続で、境界を決めてもらうことになります。
この点、私は、最近、境界確定訴訟よりも、筆界特定手続をよく利用しています。筆界特定手続は、専門的な研修を受けた登記官が、同じく専門家である土地家屋調査士と協議しながら、行政機関に残っている資料なども収集して比較検討した上で、何度も現地を実地検分して判断している点で、安心できるように思いますので、まずはこの手続を先にした方がいいと思っているからです。
但し、この制度は最近施行されたばかりということもあって、事務処理の経験の蓄積がまだできていないためか、結論がでるまでに少し時間がかかるかも知れないということと、主には測量のために多少費用がかかるということをご理解いただく必要があります。また、筆界特定は行政手続ですから、この判断に不服があれば訴訟ができます。訴訟をした上で、筆界特定手続で争いし直すことはできません。境界確定訴訟をするために筆界特定手続を経ないといけないという手続的な規制はありませんが、逆の手続が採れないということは理解しておく必要があります。
また、法律のミニ知識として、土地の境界問題については、簡易裁判所の調停を利用した話合ができないということも覚えておいた方がいいでしょう。境界は公的なものであるため、民間人と民間人の間での話合である調停をすることは許されないという理論的な問題があるためです。もっとも、私は、ちょっとしたテクニックを使って、主には土地境界をめぐる紛争であった事件を調停で解決したことがあります。このように弁護士による紛争解決はアイデア勝負という性格もありますので、弁護士として解決手法の手法に関する知識をどれぐらいの幅と深さで持っているかということが問われます。
そんなわけで、私は、現在、筆界特定委員として、筆界に関する実務的な勉強と経験を積ませていただいております。土地境界のことでお悩みの場合は、一度ご相談下さい。
海老でタイを釣る
弁護士 遠山大輔
何を隠そう、私は中学3年まで釣りバカ少年でした。毎週のように球磨川や八代港に釣り糸を垂れていました(私は熊本県出身です)。お年玉や小遣いは全部釣り道具に消える始末で、親から購入を禁止されたこともありました。特にコイ釣りへのこだわりはすごく、サツマイモを自分で蒸かして裏ごししてエサ(芋ようかん)を作り、仕掛けも全て手製でした。冬でも朝6時から出かけ、暗くなるまでやっていました。大きな野ゴイが釣れたときの喜びは格別でした。
昨年、この釣りバカ魂に再び火がつきました。お世話になっている他の事務所の事務局の方が、初めてのタイ釣りで74センチの大物を釣られたとのことで、写メを見せてもらったのです。タイの引きの強さ、引きのリズムなど、釣れたときのお話しを聞いていると、居ても立ってもいられなくなりました。早速にお願いしてお知り合いを紹介していただき、タイ釣りに連れて行ってもらいました。仕掛けは釣り針だけという「フカセ釣り」を初めて体験しました。ビギナーズラックで64センチのタイを筆頭にあれこれ釣らせてもらいました。タイの引きは本当に面白く、のめり込んでしまいました。帰って釣り竿とリールを早速買いました。しかし、船頭さんの言うとおり、が一番なのでしょう。その後も2か月に1回くらいのペースでタイ釣り、イカ釣りを楽しんでいますが、なかなか大物は上がりません。それでも、一日中海に釣り糸を垂れるだけでも気分がリフレッシュするものです。もちろん、80センチオーバーのタイが釣れれば疲れは一気に吹っ飛ぶのでしょうが…。
研修の講師
弁護士 拝野厚志
1.講師の依頼
弁護士になってから、様々な分野の方から研修の講師を依頼され、法律について講義をさせていただくことが何度かありました。私が、高齢者・障害者支援センター運営委員会と言う、成年後見等の問題を検討する委員会に所属している関係から、高齢の方の財産管理や成年後見、遺言等についての研修の講師をさせていただくことが多いです。 私自身、人に何かを説明したり教えたりすることは嫌いではないですし、自分自身の勉強にもなりますので、依頼があれば、時間が許す限り、積極的に引き受けせていただいております。
2.準備の苦労
とは言っても、依頼があってから、当日までの準備は苦労します。
私自身は、学生時代、ケースを使いながらの授業が分かりやすく、退屈もしなかったことから、同様にケースを使ってお話しさせていただくという講義スタイルを主としてとっております。
そのため、準備にあたっては、どんなケースを使えばよく分かってもらえるか、受講者の方が直面されるケースや問題点は何か、講義の当日まで、頭を悩ませることになります。
また、受講生が何らかの専門職の方が多いことから、実践的な内容になるようにも、気をつけています。法律は実際に使えてこそ役に立つものですから、手続き等についても出来る限り、説明させていただくようにしております。
さらに、何かのお土産(受講後、各職場に帰られてから職場で使うことができるマニュアル、チェックシートなど)をレジュメとともに配布させていただくことも心がけています。
3.ポリシー?(指名はしない・冗談は言わない)
私は、質問をして、受講生の方を指名し答えてもらうことはしません。
指名によって緊張感を保たせることができると言われる方もありますが、そのような恐怖政治のような講義は私の好みではありません。内容面でこそ皆さんを惹き付け、集中してもらうというのが私の方針です。
また、冗談についてはうけた試しがありませんので、諦めて、冗談も言わない方針です。ただ、事実を淡々と説明しているところで急に笑いが起こることもあり、笑いをとるというのは難しいものです。
4.抱負など
以上、色々書いてきましたが、講義をさせていただく度に、あれこれ不備があり、自分でも反省すること仕切りです。
ただ、受講後のアンケートに「分かりやすかった」との感想が書いてあると、とてもうれしくなります。その一言で準備の疲れも吹き飛びます。いずれ、パワーポインターなどの今時のものを使った講義もしてみたいと思っております。
(本稿は、京都弁護士会のホームページ内の「はい!こちら京都弁護士会です」というブログに掲載されたものを加筆修正したものです。そちらも是非、ご覧下さい。)
時代の要請?
弁護士 里内 友貴子(旧姓 細川)
弁護士になって3年目に入りました。これまで多様な案件を担当させていただいていますが、最近、複数の企業から、不当なクレーマーへの対応について、ご相談いただく機会が増えています。
そもそもクレームというのは、お客様が商品やサービス等に何らかの不満を感じられるために生じていることがほとんどです。企業は、そのような正当なクレームをきっかけとして、従来の商品やサービスをより改善・向上させることができますから、企業にとってそれは宝の山ともいうべきもので、クレーム内容(ありがたいご指摘)には真摯に耳を傾け、誠実に対応しなければならないことと思います。
しかしながら、ほんの一握りですが、明らかに理不尽な要求である不当なクレームもあります。例えば、クレームの原因自体が存在しなかったり、そのような原因があっても過大な賠償金を要求したり、あるいは企業の業務妨害に及ぶような異常な抗議態様を行ったりする等です。不当なクレーマーに対しては、企業側がいくら「お客様にご納得いただけるまで誠心誠意対応する。」といった方針で臨んでも、解決に至らないことが多いです。なぜなら、不当なクレーマーはそのような企業方針を逆手にとって、自分の要求が通るまで繰り返し対応を迫るので、いくら企業側が丁寧に順序立てた説明を尽くしても、合理的な話し合いにならず、堂々めぐりになるからです。このような場合、解決に至らないばかりか、企業担当者の貴重な勤務時間が削られて他のお客様への対応が不十分となったり、対応する企業担当者の精神的負担が深刻なものとなったりする等、却って企業がクレーム被害を受けることもあります。
そこで、不当なクレームについては、法的措置に切り替えることが重要です。一般的には、要求には応じられない旨明確に伝えることからスタートするでしょう。その際、予め当該クレームに具体的に沿った法的アドバイスを受けておけば、企業担当者自身安心して、不当なクレーマーに対して法的解決をふまえた受け答えができるようになりますし、また裁判所や警察に対して仮処分の申立手続や刑事手続等迅速に採ることも可能となりますので、多くの場合、企業は前述のクレーム被害を回避することができます。
昨年を振り返り、このようなクレーム対応案件を担当させていただく中で、改めて弁護士が必要とされる分野とは、裁判所の訴訟事件に限るものではなく、多岐に亘ることを実感しました。今年も、企業活動や市民生活に密着するあらゆる場面において、弁護士として問題解決のサポートをさせていただきたいと思います。
長岡京での一年を振り返って
弁護士 青野 理俊
1.長岡京での1年が経ちました
長岡京市に当事務所の支所が設立されて1年が経ちました。私は支所が設立されると同時に当事務所で勤務を開始いたしましたので、私の弁護士人生の1周年でもあることになります。
この一年間を振り返ると、長岡京事務所の看板を見て相談に来られた方や、タウンページを見て相談に来られた方がいらっしゃいました。速やかに法的手続を執るべき事案もありましたし、法的アドバイスのみで問題が解決し満足して頂いた事案もありました。そのように相談に来られた方から「どうも有り難うございました」と言って頂けた時は、当事務所が長岡京市に支所を出した意義を実感すると共に、私自身、弁護士になって良かったなぁと思いました。
2.当事務所には強みがあります
長岡京市での1周年を迎えた当事務所ですが、京都市内に本所を置いていることの強みがあります。それは、すぐその場で迅速に資料を集められることと、急いで法的手続を執るべき事態にも対応できることです。
例えば、紛争の相手方の資力を調べるために、相手方の住所地や事業所の所在地の不動産に担保を付けられていないかを確認する必要が出てくることがありますが、そのような場合、京都地方法務局のすぐ近くにある本所と連携して、対象不動産の登記簿謄本をご相談に来て頂いたその場ですぐに調べることが出来ます。
また、当事務所は、本所と支所をネットワークで繋ぎ、作成した書面のデータを共有しておりますので、一両日中に保全処分を申し立てる必要がある場合などにも、裁判所のすぐ近くにある本所から直接申し立てることができ、迅速な対応が可能となっております。
3.私はこれからも走り続けます
話は変わりますが、私は最近マラソンを始めました。とは言ってもハーフマラソンを数回走った程度ですので、まだまだ初心者と言ったところですが、フルマラソンに挑戦することを目標にトレーニングを積んでおります。
長岡京での1年は、私の弁護士人生をマラソンに例えますと、まだ最初の1キロ地点を通過したところに過ぎません。最初の給水ポイントにも辿り着いていないことになります。当事務所ならではの強みを活かし、長岡京市の方々に長くご愛顧いただけるようトレーニングを積んで走り続けたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。
伝える技術
事務長 田村 彰吾
二人の子供に恵まれ、時間の許す限りおむつを替えたり、食事の世話をしたりと妻と共に奮闘しております。特に1歳になったばかりの下の子はまだしゃべれませんから、食事の世話1つとっても、もっと欲しいのか、もう飽きてしまったのかよく分からず、いつも戦場です。言葉は重要なコミュニケーションツールなのです。
ところで、数年前こんな出来事がありました。ご依頼で公証人役場で契約をするため「○日2時に公証人役場で」と予約を取り、お客様とは当日役場前で待合せをお願いしたのですが、当日2時前に、少し遅れそうだ、とご連絡を頂きました。あわてて役場に事情を説明し、15分ほど遅れそうだと伝えていたところ、2時15分頃、お客様は当所にご来所されました。急いで役場へ向かっていただくようお伝えしたのですが「そんなことは聞いていない」とお怒りです。移動しながらも何度もご連絡いただいており、その都度、直接役場へと伝えていたつもりだったのですが、お叱りを受けたので思わず「何度もお伝えしたはずです」と反論したところ「いくら伝えたつもりでも相手に伝わってなければ、伝えていないのと同じや」と諭されました。全く、お客様の言うとおりです。結局25分遅れで契約は無事締結できたのですが、私は終始、先に頂いた言葉のことを考えていました。
私たち法律事務所は、「伝える」プロでなければなりません。お客様に対しては必要な情報が何かをお伝えするために、相手方には何がトラブルの原因なのかを伝えるために、そして事務所内では事務職員が皆様からからお聞きした情報を正しく弁護士に伝えるために、また、弁護士はどう処理をすべきか正しく事務職員に指示するために、求められる「伝える技術」のレベルは一般のそれよりも高いと思います。ただ伝えるだけでは足りないのです。伝える内容、相手が情報に接する状況、伝える為に必要な工夫、言葉づかい…様々なことに留意して、はじめて私たちは「伝えた」ことになるのかも知れません。
先の例でも、お客様は、私も同席すると思ってらっしゃいました。あわただしい移動中にご連絡を頂いていたのですから、私が同席しない旨をお伝えすれば、直接役場へ向かうことが「伝わった」のかも知れません。言葉だけが「伝える技術」ではないのです。私が法律事務職員になって10年、事務長職に就いてからも5年が経過しましたが、今でも悩み続けています。そして、先のお客様の言葉が、今でも鮮明に頭の中で繰り返されています。伝える技術は奥が深いです。