2014/05/30
法科大学院志願者の減少は司法試験の合格率とは関係がない
読売新聞の平成26年5月30日の論説では、法科大学院の志願者の減少問題を取り上げて、「最近は、法科大学院で学ぶ時間と費用を節約するための「近道」として、予備試験を利用するケースが目立つ。法科大学院に在籍しながら、予備試験を受ける学生も多い」ということを指摘して、その原因として、「法科大学院が自らに課せられた養成機能をきちんと果たしていないことにある」としながらも、一方で、「学費を払っても、司法試験に合格する確率が低いのなら、学生が敬遠するのは無理もない」として、司法試験の合格率の低いことが法科大学院が敬遠される理由であるかのような論調となっています。
確かに、司法試験の合格率が低い法科大学院には志願者は集まらないでしょうから、個々の法科大学院の志願者の減少の問題として、司法試験の合格率は問題となり得るのかも知れませんが、上記の論説は、法科大学院全体としての志願総数が減少していることを問題としているわけですから、論理が意図的にすり替えられているのではないでしょうか。
旧試験の時代は、2%程度の合格率でも、志願者が多かったわけですし、法科大学院制度導入後の司法試験の合格率は旧試験と比較するとはるかに高いわけですから、今の司法試験の合格率が想定よりも低いということが法科大学院の志願者の総体的減少の原因ではないことは明らかです。最大の問題は、司法試験に合格しても就職できないという状態になっていることです。就職できるかどうかもわからないことに多額の学費と時間を費やすことはできないということから、法科大学院が敬遠され、少しでも早く合格したいということから、予備試験に受験生が移動しているということです。
大事なことは、この移動は、受験生の中での移動であるに過ぎないということです。今のような就職状況からしますと、今後はそもそも法律家を志望すらしない人が増えることになり、受験生の総体が急激に減少してゆくことになりますから、勉強を始めていた人の中での移動が終われば、予備試験も志望者が減少することになるはずです。これは、法科大学院制度が導入された直後に旧試験受験生が法科大学院に移動したものの、旧試験受験生が司法試験に合格してゆく中で次第に法科大学院の志願者が減っていった現象によって、既に実証されているのではないかと思います。
従って、今やるべきことは、予備試験の制限ではなく、司法試験の合格者数を市場ニーズに適合する形で速やかに減少させて、合格すれば就職はあるという状態に変えることです。
そうすれば、受験生は安心して勉強に専念できますし、修習生も修習に専念できることになるはずです。そうなると、また、志望者数は戻ってくることになるはずです。
今導入されている制度が失敗であることは明らかですが、その失敗にさらに失敗を重ねるようなことはしてはならないと思います。予備試験の制限は、ただでさえ減っている法曹志望者をさらに減らしてしまう愚策だと思います。