2011/01/16
なぜ、弁護士人口の推移について分析を試みてみるのか
弁護士の人口を地域別に分析してみたのですが、なぜこんな暇人のようなことをしているのかと思っている方もおられるかも知れませんので、私が何を考えてこんな分析をしているかということをお話ししておくことにします。
すなわち、平成14年3月19日の司法制度改革推進計画の閣議決定が法曹人口の増加を打ち出したわけですが、そこでは、単純に人口を増やすとされていたのではなく、司法の人的基盤の充実が前提とされていて、各種の制度改革の進展や社会の法的需要を踏まえて実施してゆくことになっていたわけです。また、そこで言われていたのは法曹人口の増加であって、弁護士だけの急増ということではなかったのです。弁護士だけが増えているという現状は、閣議決定に反しているということになります。この視点からしても、弁護士人口がいかに急増しているかということを分析することは意味があります。
ところで、この「社会の法的需要」という観点からは、弁護士の就職難という現象が生じていることからしても、これだけの弁護士激増を行うだけの弁護士への社会的需要はなかったということがわかってきています。そして、そのことをまず調査して社会に公表し、政策提言を行うべきだったのは、日弁連だったと思いますが、日弁連のこれまでの執行部ではこの影響調査を丁寧に行えていなかったのではないかと私は思うのです。ですから、個人的な調査分析を行って、皆さんの参考にしていただければと思っているわけです。
周囲の同業者と話してみた私の印象ですが、弁護士の大多数の感想は、最近、弁護士が増えたなということぐらいだろうと思います。自分の単位会が他の単位会と比較して、その増え方がどうなのかということをわかっている人はほとんどいないと思います。
他の地域と比較して、弁護士があまり増えていないところでは、弁護士急増の影響があまり実感できないということになります。これは、法曹人口政策会議での発言などで実感できることがあります。
他方で、急増したところでは、その影響が強くでてきて、増加の速度が急激に低下するという現象が生じているように私には思えます。この増加速度の急落というのが大事なところだと思います。それがなぜ生じているのかということを各単位会で分析し、問題点があれば、世間に公表することが求められていると思うのです。
なお、現在、就職戦線で戦っている修習生にとっては、どこの単位会で弁護士が増えていて、あまり増えていない地域はどこなのかという情報は、少しは役に立つかも知れません。そういう意味で考えると、単位会単位ではなく、裁判所の支部単位で増加傾向を分析することに価値がでてきているのかも知れませんし、将来的には、支部単位で増加の余地があるところを探す弁護士がでてくるという時代がすぐそこまで来ているように思います。しかし、さすがに、支部単位での増加率の調査分析までは個人では無理です。日弁連や各単位会で分析をしていただければと思います。