2025/01/06
2025 初春号 vol.21 白浜法律事務所報
景観政策の影響に関する雑感
弁護士 白浜徹朗
令和6年8月30日の京都新聞の記事で、宇治市の六地蔵地域の人口が急増している反面、伏見区醍醐地域の人口が減少していることが紹介されていました。景観政策のため、六地蔵駅周辺でも京都市側は大規模マンションが建築されず、手頃な価格の住宅を求めて子育て世帯らが宇治市に流失したという記事となっていました。
私は、景観政策が実施されるときに、京都市内におけるマンションの建設は事実上困難になるということを指摘していました。それは、土地の価格がその土地にどれだけの建物が建つかということによって、決まってくることになるため、高さだけを規制すると、京都市内では、大きなマンションは新たに建たなくなってしまうということからでした。
不動産の価格については、不動産鑑定という制度があります。この不動産鑑定では、「当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制」というもの、つまり、建築規制は重視されるということが国の定めた基準にも示されています。収益率ということで、その土地上にどれだけの賃料をもらえる建物が建つかということも重視されます。これを厳しく規制して京都市内では大きなマンションは建築できなくなってしまい、結果として京都市に近接した地域での開発が促進されるということになってしまったわけです。このため、六地蔵駅周辺では宇治市地域で、桂川駅周辺などでは向日市地域を中心として大規模開発が進んだのだろうと思います。
私が、京都新聞の記事でさらに気になったのは、六地蔵から離れた醍醐駅周辺でも人口減少となってしまったということが紹介されていたことです。同じようなことが、地下鉄の駅ができた頃に開発が一時的に進んだ北大路駅とか北山駅の周辺でも発生していないか少し気になるところです。
今後、京都市では景観政策の見直しをされるのかも知れませんが、周辺地域とのバランスを考慮した見直しをされるとか、地下鉄駅を建設したときに考えていた都市計画とのずれが生じていないかなども含めた見直しなどが望まれるように思います。
長岡京事務所が移転いたします。
弁護士 拝野厚志
今般、ビルのオーナー様のご都合により、長岡京事務所を移転することになりました。
長岡京事務所開設の平成21年12月から、15年間にわたって、現在の場所(トーセビル様)で業務を行ってまいりました。
その間、多くの皆様にご来所いただき、様々なお手伝いをさせていただくともに、多くの方にお見知り置きいただき、多くのお声かけをいただきました。日頃のご愛顧に対し、改めて感謝申し上げます。
移転先は、下記の地図のとおりとなります。令和7年1月下旬から、移転先での業務を開始する予定です。電話番号、メールアドレスはそのままとなります。場所は、長岡天神駅の南側へ移転することになりますが、これまでと同じく長岡天神駅からすぐのところとなりますので、お気軽にお立ち寄りください。なお、移転作業中は、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、何卒、ご容赦のほどをよろしくお願い申し上げます。
移転先を探している間、多くの方から、お声かけ、また、ご心配いただき、誠にありがとうございました。こんなに多くの方に気にかけていただいたことを本当に有り難く、感謝しております。
京都縦貫道路が長岡京まで開通してから、亀岡や福知山等からのお客様も増えております。これからも、長岡京・向日市・大山崎町の乙訓をはじめとする、京都府南部の法的なインフラとしての役割を存分に果たし、法的な側面より支えさせていただきたいと決意しております。どうぞ、新しい場所の長岡京事務所をよろしくお願い申し上げます。
公益法人認定法並びに公益信託法の改正について
弁護士 青野理俊
令和6年5月14日の衆議院本会議にて「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「公益信託に関する法律」が原案どおり可決・成立し、22日に公布されました。公益法人認定法は16年ぶり、公益信託法は102年ぶりの抜本的な見直しとなります。
令和4年時点で、公益法人は法人数約9700、事業費規模年間約5兆円、総資産約31兆円を有しており、民間による公益活動の主要な担い手として社会で大きな役割を果たしています。しかし、旧来の民法法人制度下で不祥事が度々発生した過去の経緯から、公益法人認定法は厳格な事前規制による行政が行われてきたこともあって、公益的活動の機動的な取組みが制約されるきらいがありました。そこで、この度の公益法人認定法の改正により、①収支相償原則や有休財産規制を見直すことで財産規律を柔軟明確化しつつ、事後監督で対応できる事項は届出制にするなど行政手続の簡素合理化が目指されました。また、②3区分経理(公益目的事業、収益事業等、法人運営)を原則義務付けするなどわかりやすい財務情報開示を推進しつつ、法人にガバナンス充実や透明性の向上を図る努力義務が課されました。特に後者においては、自主的な取組等を事業報告へ記載して公表するよう義務づけされましたので、今後、公益法人においてはガバナンス強化策として例えば内部統制システムの計画、運用並びに評価を進める必要が出てくるものと思われます。
また、公益法人制度より軽量・軽装備な財産の公益活用手段として公益信託があります。公益法人制度に比べ、事務所等の設置が求められないこと、受託者が行う公益信託事務の内容を事務単位で細かく柔軟に設計できること、担い手が破産等しても受託者を変更して公益活動を継続できることが特徴と言えます。ところが、公益法人制度の利用が広がる一方で、公益信託制度は余り活用されないままでした。そこで、この度の公益信託法の改正により、①公益法人と共通の行政庁による認可監督制度が創設され、②公益法人の公益認定と整合的な認可基準や監督体制が法定されることになりました。こうして、透明性の高い認可・監督の仕組みのもと、信託会社のみならず公益法人等が受託者となって公益信託の活用が進み、公益的活動の範囲が拡大することが期待されます。
当職は財産承継の観点から遺言のみならず民事信託の組成等について研鑽を積んでまいりました。公益的活動のために活用したいとのご要望にも対応いたしますので、お気軽にご相談いただけると幸いです。
他士業との連携
弁護士 大杉光城
昨年も大変お世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。
私は、平成25年12月に弁護士登録し、昨年末で12年目になりました。本当に早いものです。約12年前に京都に来たときには、周りには知り合いも殆どいない状態ではありましたが、他業種との交流を意識してきたこともあり、現在では他業種の友人が多くなりました。その他業種の友人から案件を紹介していただいたり、受任事件の関係でその業界の実情や専門的知識を教えていただいたりと、今ではそのような人脈が私のかけがえのない財産となっています。
その中でも弁護士業務に不可欠なのが、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁理士、社会保険労務士、行政書士などの隣接他士業との連携です。弁護士は、法律事務全般を代理できますが、不動産鑑定や企業の監査業務などの法律事務以外の業務は行えません。また、法律事務であれば、登記申請等の他士業の業務も行うことはできますが、やはり、「餅は餅屋」で、他士業の業務はその業務に関する専門性の高い他士業に任せるのが安心です。
弁護士が関わる事件でも、不動産登記申請や税務申告が必要となり、信頼できる他士業にお繋ぎすることはよくあります。また、弁護士が取り扱う業務は主に「争い事」ですが、争いが生じる分野は際限がなく、不動産事件や税務が関わる事件などはもちろん、中小企業の経営に関する事件や労働事件などもあります。そのような分野の争い事を解決するにあたっては、弁護士自身の研鑽はもちろんですが、問題となっている各分野の業務に通じた他士業の助けを得ることが必要不可欠といえます。
昨年も他士業の先生方にお世話になることが大変多くありました。今年も自己研鑽に励むとともに、他士業の先生方と交流を深め、「何か困ったらとりあえず大杉に相談すれば何とかなる」と真っ先に思い出してもらえるようになりたいと思います。
非常勤裁判官の任期を終えて
弁護士 津田一史
昨秋、再任を含めて合計4年間、務めてまいりました京都簡易裁判所民事調停官(非常勤裁判官)の任期を終えました。弁護士を続けながら、週1回、裁判官と同等の権限をもって裁判所にて勤務できた日々を懐かしく感じています。
また、4年間もの長きにわたり、弁護士ときどき裁判官として、簡易裁判所で民事調停事件の解決を取り扱う機会を得て、裁判所において担当した多種多様な調停事件を思い返しますと、守秘義務の関係で内容はともかく、その経験を通じて、弁護士としてお伝えできることも少なからずございます。
みなさまは、弁護士というと、厳粛な法廷において、権利主張をして、相手方を徹底的に懲らしめるといったイメージをお持ちになられているかもしれません。同業者からも、弁護士はいわゆる「裁判屋」だと言われることさえあります。しかしながら、私は、みなさまの周囲にあるトラブルを解決することが第一の目的であって、決して権利主張や相手方を懲らしめるといった目的が先行するものではない仕事だと捉えています。
もっとも、弁護士は、ご依頼を受けた依頼者のために法律事務を行うものでして、依頼者ご本人の正当な権利や利益を誠実に擁護しなければならないのは当然のことです。ご依頼者の利益を擁護するため、できる限りの努力を尽くして法令や法律事務に精通することが求められます。非常勤裁判官を務めている間も、様々な事件を解決しようと試みるべく、自らに足りない点の自己研鑽を欠かさないよう留意してきました。この非常勤裁判官の任期で得られた経験も踏まえて、みなさまの周囲にあるトラブルを解決するべく、的確なリーガルサービスをみなさまに提供できるよう努力する所存です。
今後とも、これまでの非常勤裁判官として手続に携わった経験を踏まえて、解決が難しいと思われた事件でも、みなさまの言い分をじっくりと拝聴し、みなさまの将来にとって「Win-Win」での解決をすることも視野に入れて、紛争の解決に努めます。適切な解決手段を選ぶにあたって、手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。
遺言・相続サイト リニューアル
弁護士 中川由宇
ご紹介によるご依頼の多い弊所ですが、新規のお客様にも分かりやすいホームページを作成するよう心掛けています。本体サイトの他に、遺言・相続、不動産競売、交通事故のサブサイトがあり、コラムやQ&A、事例解説等により、弁護士に相談する前の段階で、ある程度の専門的な知識を得たり解決のイメージを掴んでいただけたりできるようにしています。
この度、スマートフォンでもお読みいただきやすくするため、サブサイト「遺言・相続あんしん相談室」をリニューアルする運びとなりました。遺言に関するコラムでは、単に法制度の解説をするのではなく、相続紛争の実情を踏まえたトラブル防止のための知恵をお伝えしています。
たとえば、遺言がない場合、親と同居していた子と別居していた子が、親の遺産を巡り長年争うことがしばしばあります。この背景には、同居の子は、親の介護や実家での様々な労務に伴う苦労が分かってもらえていないと感じがちであるのに対し、別居の子は、同居の子による親の財産管理が不透明だと不信感を募らしやすいといった実情があります。親としては想像したくないでしょうが、子同士の相続紛争が長年にわたり続くことが少なくありません。このような事態を防ぐため、判断能力の十分あるうちに遺言のご相談をされることをお勧めしています。
リアルな紛争の実態を知っている弁護士だからこそできるご助言を、時代に合わせた方法でお伝えし続けたい。「脱皮できない蛇は滅びる」と言います。旧い殻を破り、これからも、多くの方のお力になれるよう努めてまいります。
変える勇気
事務長 田村彰吾
人間というのは、体温など身体の状態を一定に保つ機能があるのと同様に、心理的にも変化を拒む傾向があり、これまでの習慣やライフスタイルを変えるにはとてもエネルギーを使うそうです。年齢を重ね、おなか回りが気になってきても、なかなか運動習慣や食生活を改められないことを顧みれば、なるほど、そういう機能があるのかも知れないと思い至ります。
世に言うブラック企業に勤めてしまった方が、家族に心配されても、自身も体調を崩すなどしても、なかなか転職できず、最悪の事態に至るというのも、こういう人間が持つ機能が影響しているのかも知れません。何かを変えるというのは大きなエネルギーを使うようです。長時間労働などで疲労を蓄積し、お金の心配が常に頭の中を埋め尽くしているようなときに、冷静に現状を判断し、環境を変える決断をすることが至難の業であることは想像に難くありません。
これは何も会社員に限ったことではありません。景気はいっこうに明るくなる兆しがない中、コロナ融資の返済も始まり、売上が思うように回復しない現状で、いったん立ち止まって事業の継続を検討する。まして、多くの従業員を抱えた立場で、資金繰りが頭の中を覆い尽くしながら、現状を変えるのか、維持するのか。筆舌に尽くしがたい苦悩を乗り越えなければならないと思います。
しかし、事業を与る経営者には重い責任があります。この決断如何によって、多くの従業員の生活が左右されるのです。しかし、この決断が遅れれば、次第に選択肢を狭めてしまい、終には「企業の突然死」を招いてしまいます。 早期であれば、任意の事業(一部)譲渡や、会社分割による収益事業の分離、不採算事業の切り離し、民事再生手続、自己破産手続などその状況によって様々な選択肢を検討できたかも知れません。また、このような整理を行わずとも、事業提携などによる資金調達で業績回復期まで耐えることが出来るかもしれません。
「突然死」を迎えてしまった企業の従業員たちには為す術がありません。本来なら裁判所から選任された専門職が行う手続であった解雇手続も、未払い賃金処理も行われず、そもそも未払給与の計算すら出来ていなければ、従業員たちは再就職どころか、明日の生活もままなりません。
「とりあえず現状維持」に陥る前に、ぜひ専門職の力を頼ってください。おなか回りのお肉も、荒んだ労働環境も、事業の継続検討も、はじめの一歩は「変わる勇気」を持つことからなのかも知れません。