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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2013/08/09

就職に対する修習生の意識の変化について思うこと

 4月からは修習委員長を外れたので、3月までよりは細かな情報は入りにくくはなっているが、就職支援の委員会に入ったりもしている関係で、修習生の就職問題に絡んだ情報については、まだまだ触れる機会が多い。
 ざっくりとした感想だが、数年前だと、「こんなに就職が大変だとは思ってもみなかった」ということを述べる修習生がかなりいたような印象があったが、最近では、そんな修習生はまずいないので、司法試験に合格したという資格を持ったということだけでは弁護士事務所にまともに就職できるのは奇跡に近いことなのだということを理解している修習生が多くなっているように思う。しかし、数年前までなら、地方にも積極的にでかけて就職を確保するような人がかなりいたのに、最近では、履歴書の送付すらあまりやっていないような消極的姿勢の修習生も目立つようになってきたようにも感じる。一種のあきらめムードがあるような気がするのである。つい最近耳にした話では、人口過疎地域で募集があっても応募する修習生がほとんどいなかったり、企業からの募集があっても応募する修習生が少ないとか、当該地域での評価が低い事務所(ブラック事務所などと言われているようである。)には、たとえ給与水準が高くても応募する修習生すらいない(つまり、危ない事務所であってもとりあえず働いてみて弁護士経験積んだら独立したらいいんやというような冒険心のある人はいない。)というような状況になっているようである(誤解されると困るので、申し添えておきますが、私としてはブラック事務所にはいかない方がいいとは思っているので、ブラック事務所への就職を推奨しているわけではありません。)。
 このような消極的な姿勢の修習生が増えてきた背景にはロースクール入学者の変質があるのではないかという仮説を私は立てている。就職氷河期が続いていた中でもかなり大学生の就職環境は改善してきている今のご時世に、就職もできないようなロースクールにわざわざ入学するのは、自分の希望に添うような就職先がみつからなかったので、就職時期を少し先延ばしにしようとしてとりあえずロースクールでも籍を置いておこうかなということで入学した人がかなりいるのではないかという懸念である。実際、有名私学のロースクールで実務家教員として指導した経験のある弁護士からはこのような動機であまり目的意識もないままに入学してきている学生が増えているということを聞いたことがある。このような消極的な意識でロースクールに入って司法試験に合格したとしても、絶対に弁護士になろうというような意識になることもなく、漫然と時間が流れるのを待つというような人がでてくるのは自然なことであろう。ただ、そうなると、法曹界の変質は更に進行することになるのだろう。それは、利用者のためにはあまりよくない方向に流れてゆくことになるのではないかと懸念するところがある。
 ところで、今年は、サマクラはやらないことにした。代わりにロースクール卒業生向けにアルバイトを募集してみたが、1人も応募者がいない。サマクラではないけれども、アルバイトとして弁護士事務所の仕事に触れるだけでも、いいきっかけになるのではないかと思うのだが、就職に関係ないのならやめておこうということなのかも知れない。しかし、これも、今の修習生にみられる消極的姿勢の現れのように思えてならない。判例の検索と分析などロースクール卒業生にならば期待できる仕事もあるのだが、自分でやらねばならないとなると、今年の夏は、あまりゆっくりできそうもない。この暑い夏を土日も事務所で仕事しながらやり過ごすことになりそうである。

2013/06/24

請求退会者の増加傾向を示すデータ

 弁護士として登録できる時期に登録しない人が増えているということについては、日弁連でも統計データを確認して公表するようになっておりますが、請求退会者の増加傾向などについてまとめているのは私だけということのようですから、順次情報提供してゆこうと思っております。
 さて、毎年、自由と正義の6月号には、その年の3月中(要するに3月末まで)に退会された方が掲載されます。このため、私が統計を取り始めてからのデータによると、6月号は最も請求退会者が多い自由と正義ということになっています。平成20年6月号では合計47名、21年が38名、22年が36名、23年が41名、24年が46名、今年の25年は59名となっておりますので、この数年で6月号に掲載される請求退会者は急増しています。ちなみに、6月号までの累計では、平成20年が114名、21年が114名、22年が116名、23年が118名、24年が151名、今年の25年は163名となっています。なお、急増政策が実施されるまでは、年間の請求退会者は50名程度でしたから、1月で昔の1年間分の人以上が退会していることになりますし、その増加傾向は、この2年ほどで加速しているように思います。
 ちなみに、今年の年初の60期の弁護士人口は、現行と新を合わせて2,072名だったのが、平成25年6月22日現在で2,068名と4名の減少で、61期は2,108名が2,098名と10名の減少、62期だけは2,093名のまま増減なし、63期は1,918名が1,902名と16名の減少、64期は1,921名が1,917名と4名の減少です。
 また、65期はまだ登録可能日から半年程度なわけなので、年初の人口が1,371名だったものが1,841名と470名増えていますが、たまたま平成24年6月14日に私が確認していた64期の人口は1,893名でしたから、昨年と比較すると弁護士人口が減ってきていることがわかります。
 なお、二回試験の合格者数から裁判官や検察官への任官者を除いた数字は、60期が2,145名、61期が2,148名、62期が2,162名、63期が1,972名、64期が1,983名、65期は1,916名です。この数字と比較した現在の弁護士人口の比率は、60期は96.41%、61期は97.67%、62期は96.81%、63期は96.45%、64期は96.67%、65期は96.09%となっています。
 なお、私のチェックでは、64期のピークは平成25年2月中旬の1,924名で、その後は次第に減少していっています。ちなみに、60期のピークは、平成24年5月下旬の2,094名で、61期は平成24年6月中旬の2,122名、62期は平成24年3月中旬の2,109名、63期は平成24年4月下旬の1,925名です。私の独自調査ですから、私が調査を開始する前の平成24年3月より前にピークが来ていることや、私がチェックをしていない日にピークが来ている可能性もあるということには、ご注意ください。
二回試験合格者数から  ピーク数とその時期 25年6月22日の弁護士数
任官者数を引いた人数
60期   2,145名    2,094名(24年5月下旬) 2,068名
61期   2,148名    2,122名(24年6月中旬) 2,098名
62期   2,162名    2,109名(24年3月中旬) 2,093名
63期   1,972名    1,925名(24年4月下旬) 1,902名
64期   1,983名    1,924名(25年2月中旬) 1,917名
65期   1,916名    ピーク時期は未だ不明     1,841名

2013/06/11

「司法崩壊の危機」という本を共同執筆しました

 最近、ブログの更新ができておりませんでした。その理由の主なところは、仕事が忙しかったということですが、標記の本の共同執筆を依頼されて、その執筆作業にも追われていたからでもあります。仕事に穴を空けることなく、執筆作業をするのは大変でした。準備書面などがぎりぎりになって裁判所や関係者の方々にご迷惑をおかけしたことは心苦しく思っております。
  http://kadensha.net/books/2013/201306shihouhoukainokiki.html
 このような共同執筆には躊躇するところもありましたが、法曹養成制度検討会議というものが一定の意見をとりまとめるという重大な時期でもありますし、私の個人的な思いとしても、この10年ぐらいは法曹人口問題に注力してきましたので、その集大成としての文書をとりまとめておくことも大事なことかなと思って、がんばってみたような次第です。
 私の担当した分野は、法曹人口全般ではなく、司法修習ということで、あまり世間に実態が知られていないところですし、弁護士であっても、司法修習に関わった経験がなかったら、現状がよくわからないと思います。特に、法科大学院を卒業していない人には、今の司法修習のことはよくわからないほど大きく変容しているところがあります。このため、法曹三者にあまり縁のない人にもできるだけわかりやすいようにするとともに、司法修習を実際に受けた人にも、他の期の人との違いなどがわかるようにしてみました。法曹三者の方々にも、自分達が受けてきた修習の持つ意味を見直す機会になるかも知れません。
 執筆作業をしながら思ったのですが、法科大学院という制度を考えた人は、実際の法曹養成課程を経験していないか、あるいは、この制度を利用しようとする学生などの志望者が実際にどういう生活をすることになるのかとか、卒業生を受け入れる側がどんなことになるのかなど、制度を実施したときの影響などを全く想像することができないような欠陥的思考の人物だったのではないかと思います。最初の卒業生が司法試験に合格したときぐらいから、弁護士事務所に就職できない人が増えてきて、今や就職できたら奇跡という時代になってしまい、就職もできない資格を苦労して費用もかけても無駄ということで、志望者すら激減してしまったわけですから、根本的に制度そのものが欠陥であることは既に実証されてしまいました。
 このような事態を改善するべく設置された法曹養成制度検討会議の中間的とりまとめは、この本の中で詳細に批判的検討をさせていただいたとおり、現場を無視した無責任極まりない提言ですから、国会などで改善案を議論するに際しての検討素材すら提供できていないと思います。それどころか、パブリックコメントすら真摯に公表もしないということで、民主的な手続すら無視して暴走しているように思います。このような事態を放置していたのでは、司法界に優秀な人材を確保することなど期待できなくなるということで、まさに「司法崩壊の危機」にあると思います。
 共同執筆者の方々の論稿も、どれも説得力のあるものばかりです。現状の問題点は、この本があれば、おわかりいただけると思います。また、同時期に発刊された和田吉弘先生の「法曹養成制度の問題点と解決策」をご覧いただければ、法曹養成制度検討会議の問題点がよくわかることになるものと思います。
 ご笑覧いただければ幸いです。

2013/04/16

弁護士の廃業が未だに増え続けているという現実とそれが意味すること

 個人的に自由と正義の退会者欄の整理を続けていますが、今年は、1月から4月号までの累計で既に88名となっていて、例年より早いペースで退会者が増えています。
 これは、弁護士になったものの、様々な理由で弁護士を廃業する人が増えているということですが、急増が開始される前は、年間でも50名程度だったものが、4月の段階で88名になるほどに増加しているということは、決して軽視できないように思います。これは、弁護士という仕事では生活が困難になった人が増えているということを意味しているからです。それだけ弁護士の職業的魅力が失われてきているということですが、これは、志望者を減らすことにつながりますので、後継者の質の確保が困難になるということをもたらします。現に、大学の法学部の志望者が減っています。弁護士と同じように司法試験合格者という人達を供給源としている裁判所や検察庁でも同様の後継者問題が生じますから、三権のうち司法の弱体化だけが進行するということになります。そのうち、弁護過誤の多発や、誤審、誤認逮捕などの司法分野に関連した様々な問題が日常的に発生するというような未来予想をしたとしても決しておかしなことではないと思います。私自身の経験としても、これまでではあり得なかったようなおかしな保全決定に対処して仮処分異議をせざるを得なかったことなどがあります。これからの弁護士の仕事として、弁護士や裁判官・検察官の責任を問うような業務も増えてくるかも知れません。当然、このような業務が生じるとすれば、国民が被害を受けていることが日常的に発生している社会が到来しているということになりますが、そんな社会を国民が望んでいたわけではないはずです。しかるに、このような司法の弱体化や国民への被害発生という実害の発生は、法曹養成という意図的な政策の結果であること、そこに関わった法科大学院関係者には、そこから経済的利益(学費や国庫支援など)を得ていた以上、単なる政策の実行者というだけではない極めて重大な責任があるということは指摘しておかねばならないように思います。
          4月号まで  年間の退会
          の退会者  者総数
  2008年   52      198
  2009年   65      202
  2010年   70      207
  2011年   67      229
  2012年   76      294
  2013年   88     ???