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3K(新聞寄稿)

3K
  • 護士の仕事は、世間一般からすると知的で優雅なイメージを持たれているようである。でも、まじめに仕事をしている限りかなりハードで、知力よりは体力勝負のところがある。私は、冗談めかして「3Kやな」と説明する。弁護士の仕事は、きつく、危険で、汚いということである。
     
  • 「きつい」というのは、結構夜遅くまで仕事をしているという仕事量の問題もあるが、法廷での証人調べなどに神経を使うし、相手方との交渉、ひっきりなしにかかってくる様々な電話への対応など、種々雑多の仕事を並行してこなすことを求められるということである。
     相手に怒鳴られたり、泣かれたり、かなりストレスを感じるような仕事も多い。実際、ストレスから体調を崩す弁護士は少なくない。
     
  • 「危険」というのは、相手方から恨まれたり、もめ事に巻き込まれたりすることで、弁護士自身が攻撃の的になってしまうということである。
     相談に来た人が弁護士を利用して悪いことをしようとたくらんでいたら、大変なことになる。この点が、けがや病気を抱えた人が訪れるだけの病院とは大きく異なるところで、弁護士はどんな人なのかよくわかっていない人の事件は、あまり受けたくないと考える傾向にある。
     弁護士が狙われた事件としては、オウム真理教の信徒に殺害された坂本弁護士事件がよく知られている。私自身は実際に危険な目に遭ったことはあまりないほうだが、それでも裁判所のエレベーターの中で訴訟の相手方と2人きりになったとき、「事件が終わるまで生きていろよな」といわれたことがある。
     暴力団との交渉もあるが、これは相手方もある意味でプロなので、新たな事件となるようなことはしてこないことが多い。実際に担当してみると、それほど怖くはないのである。けれども、これも社会一般からすると、危険な仕事ということになるのかも知れない。
     
  • 「汚い」ということではどうか。部屋の主が倒産して放置されているような室内にはいるなど、衛生的に汚いという仕事もたまにはある。しかし、弁護士として汚いなと思うのは、むしろ人間として汚い行為とか、世間一般からすれば、「なんて汚いことをするんだ」というような案件にぶつかることである。
     例えば、離婚訴訟。不安定な世相を反映してか、離婚する夫婦は急増している。
     離婚の原因の多くは男性側にあるようだ。子どもがいるのに父親としての自覚がなく、車など、趣味や遊びにばかり金をつぎ込んで家計に金を入れない男性、妻以外の女性と不倫関係に陥ってしまう男性……。こうした自己中心的な男性が増えているように思う。その証拠に、夫ではなく妻から離婚を申し入れるケースが圧倒的に多い。
     離婚でいちばんかわいそうなのは子どもである。ある女性から受けた離婚相談では、夫が自分の娘の面前で「息子はほしいけど、この子はいらん」と言ったということであった。
     小さいときから人権教育を受けてきたはずの世代なのに、なぜこういう感覚の親がいるのか不思議でならない。こうした人間として本当に嫌な面を見せつけられると非常に気がめいる。
     
  • まり、弁護士の仕事はきつく、危険で、汚いところを見せつけられるのが実際の仕事というわけである。
     
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  • (注) 本稿は、朝日新聞 京都版「法廷メモランダム」(平成14年2月9日)に、掲載されたものです。
     
著 白浜徹朗
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